はじめに
法務省は先月29日、株主総会の招集通知に添付する資料についてオンラインで提供できる範囲を拡充する省令改正をしていたことがわかりました。新型コロナウイルス感染拡大を受けて昨年5月に採った措置が今年も9月30日まで実施されます。今回は招集通知の添付資料についてみていきます。
株主総会の招集手続き
株主総会を招集する場合、まず株主に招集通知を送付することとなります。この通知は公開会社では株主総会の開催日より2週間前までに行う必要があります(会社法299条1項)。非公開会社の場合はこの期間が1週間となりますが、書面・電子投票を採用している場合にはやはり2週間となります。通知方法については取締役会設置会社である場合または書面・電子投票を採用している場合は書面の送付が必要となりますが、それ以外の場合は特に制限はなく、電話や口頭、メールなどでも可能です(同2項)。なお書面を要する場合でも株主の承諾を得てメールによることも可能です。招集通知の記載事項は株主総会の日時・場所、議題、書面投票ができる場合はその旨、電子投票ができる場合はその旨、その他一定の場合に議案の概要となります(同4項)。
招集通知の添付書類
取締役会設置会社または書面・電子投票を採用する場合は招集通知に一定の書類を添付する必要があります(437条、446条6項、施行規則133条)。具体的には①事業報告、②貸借対照表、③損益計算書、④株主資本等変動計算書、⑤個別注記表となります。さらに監査役設置会社で会計監査人を置いていない場合は監査報告が、会計監査人設置会社または指名委員会等設置会社の場合は連結計算書類等も必要となってきます。これらをあらかじめ株主に提供することにより、株主総会での目的事項について検討して議決権行使の準備をする機会を与えることが目的と言われております。
ウェブ開示によるみなし提供制度
上記添付書類のうち事業報告と計算書類の一部については招集通知発出の時から定時総会終了後3ヶ月経過するまでインターネット上のウェブサイトに掲載することによって株主に提供されたこととみなされる制度が用意されております(施行規則133条3項、計算規則133条4項)。この制度を採用するにはその旨の定款の規定が必要です。これにより株主総会招集通知の事務的負担を軽減することが可能となります。具体的には株主総会参考書類のうちの議案等以外、事業報告の一部、計算書類の株主資本等変動計算書、個別注記表、連結計算書類が対象となります。貸借対照表と損益計算書については対象外となっております。
時限的施行規則の改正
法務省では昨年5月15日に新型コロナウイルス感染拡大を考慮して、その日から6ヶ月以内に招集手続きが開始される定時株主総会に限りウェブ開示によるみなし提供制度の対象を拡充しました。対象となるのは事業報告のうち、当該事業年度における事業の経過及びその成果と対処すべき課題、そして貸借対照表と損益計算書となります。貸借対照表と損益計算書についてはウェブ開示の定款の定めがあること、会計監査意見が無限定適正意見であること、監査役から監査について相当でないとの意見がないこと、取締役会を設置していること等とされます。
コメント
今回の法務省の措置は上に述べた昨年5月のウェブ開示によるみなし提供制度の対象を拡大した措置を今年もまた9月30日まで実施するというものです。これにより今年も貸借対照表や損益計算書についてもインターネットのウェブサイト上で提供することが可能となります。以上のように会社法および施行規則、計算規則では株主総会の招集やその手続、必要な添付書面などかなり詳細な規定を置いております。取締役会非設置会社ではこれらの大部分が省略できますが、取締役会を設置する場合は様々な点で手続きが複雑になります。取締役会の設置や公開会社化を検討している場合には手続き上どのような違いが生じるかを予め把握しておくことが重要と言えるでしょう。