はじめに
経営再建中のオンキヨーホームエンターテイメント(旧オンキヨー)が債務超過によりジャスダック上場廃止の危機に陥っていることがわかりました。純損益は33億円の赤字とのことです。今回は証券取引所が定める上場廃止基準について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、オンキヨーは長年の販売不振と新型コロナウイルス感染拡大により昨年3月期で33億円の債務超過に陥っていたとされます。同社は債務と株式を交換したり、新株発行により資本状況の改善を図っておりましたが、株価が低迷しており計画通りに資金が集められなかったとのことです。昨年12月に海外ファンドに対し格安で新株を割り当てる新株予約権発行や優先株などの発行も計画されており、約60億円相当の増資が見込まれているとされます。反面それにより同社の議決権は海外ファンドが7割を握ることとなる見通しです。
一部・二部の上場廃止基準
証券取引所では一定の要件を満たした場合に上場廃止となる上場廃止基準が設けられております。その概要は以下のとおりです。①株主数が400人未満(猶予期間1年)、②流通株式数2000単位未満(猶予期間1年)、③流通時価総額5億円未満(猶予期間1年)、④時価総額10億円未満である場合に9ヶ月以内に10億円以上とならない場合、⑤債務超過となった場合に1年以内に解消しない場合、⑥売買高が直近1年間平均で10単位未満または3ヶ月間売買不成立、⑦有価証券報告書等の提出遅延、⑧有価証券報告書等の虚偽記載があり市場秩序維持に必要と認める場合、⑨特設注意市場銘柄指定要件に該当しているにもかかわらず内部管理体制に改善がない場合等が挙げられております。
ジャスダックの上場廃止基準
ジャスダック市場においても上場廃止基準が設定されております。一部・二部とほぼ同様と言えますが一部異なる部分があります。①株主数が150人未満(猶予期間1年)、②流通株式数500単位未満(猶予期間1年)、③流通時価総額2.5億円未満(猶予期間1年)、④直近4連結会計粘土においてキャッシュフローがマイナスである場合に1年以内に改善しない場合、⑤株価が10円未満となり3ヶ月以内に10円以上とならない場合等が一部・二部と異なる点となっており、その他有価証券報告書等の虚偽記載や債務超過に関する基準などは同様と言えます。
負債と株式の交換
本件でオンキヨーは債務と自社の株式を交換して自己資本の健全化を図っておりました。これはいわゆるデット・エクイティ・スワップと呼ばれる手法で、債務の返済に代えて債権者に株式を交付するというものです。これにより会社は負債が減少し資本が増加することから貸借対照表上も自己資本比率が改善するということです。債権者側にとっても債権が無くなる代わりに株式が取得できることから資産の減少は無く、また将来収益が上がれば株価も上がり利益が見込まれるというメリットがあります。
コメント
本件でオンキヨーは2020年3月期に約33億円の債務超過に陥りました。デット・エクイティ・スワップや新株発行で改善を図ったものの既に株価が大幅に低迷しており改善にはいたりませんでした。今後海外ファンド等による新株の引受が予定通り進まなければ今年3月に上場廃止基準を満たすこととなる見通しと言えます。以上のように証券取引所では一定の要件のもとに上場廃止となる基準が定められております。有価証券報告書の虚偽記載など一般にイメージしやすいものから業績や株価、時価総額に関するものなどもあります。どのような場合に上場廃止の危険が生じるかをあらかじめ把握しておくことが重要と言えるでしょう。