はじめに
「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律」に基づき、中小企業・小規模事業者の受注の機会の増大を図るための措置事項を定める「令和3年度中小企業者に関する国等の契約の基本方針」(以下「基本方針」という。)を9月24日に閣議決定しました。
事案の概要
日本の経済は新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあり、日本経済を持続的発展の軌道に乗せていくために中小企業者の受注機会の増大を図りその事業活動の活性化を図ることが重要です。また、東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、令和元年東日本台風及び令和2年7月豪雨が甚大な被害をもたらし、依然、被災した中小企業・小規模事業者の一刻も早い 復旧・復興が課題となっていることにも留意する必要があります。さらに、政府が進める「働き方改革」にも引き続き対応していくことが求められており、令和2年4月から働き方改革関連法が中小企業にも適用され、官公需における発注や納入時期の平準化や弾力化、適正な納期や工期の確保などに配慮を行い、受注者である中小企業・小規模事業者が労働時間の短縮や労働条件の改善を行うことができるよう、特段の配慮を行うことが求められています。加えて、令和3年度においては、最低賃金額の大幅な引上げが予定されています。このため、最低賃金引上げ分の円滑な価格転嫁を図るため契約金額を変更するなど、受注者である中小企業・小規模事業者が最低賃金法を遵守する義務を履行できるよう配慮する必要があります。以上の要請から、中小企業者の受注の機会の増大を目指して基本方針が定められました。
中小企業・小規模事業者向け契約目標
国は、国等の契約のうち、官公需予算総額に占める中小企業・小規模事業者向け契約金額の比率が前年度までの実績を上回るよう努め、前年度においては国等全体として60%を目指してきました。令和3年度も引き続き新型コロナウイルス感染症拡大の影響に鑑み、中小企業・小規模事業者に対してこれまで以上に配慮する観点から、さらにこれらの措置を強化し、国等全体として61%、金額が約4兆8,240億円 になるよう目指すものとします。このうち、新規中小企業者の契約比率についても、前年度までの実績を上回るよう努め、国等全体として引き続き3%を目指すものとします。令和3年度に新たに講ずる主な措置としては、最低賃金額の大幅な引上げが 予定されていることから、受注者である中小企業・小規模事業者が最低賃金引上げ分の円滑な価格転嫁を図ることができるよう柔軟に契約額の変更に応じることと、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている中小企業・小規模事業者に対する配慮を強化するため、入札参加機会の確保のための柔軟な対応等を行うことが挙げられます。
コメント
新型コロナウイルスによる影響にかかわらず、国からは経済保護のための様々な施策が打ち出されています。企業法務従事者としては、国の施策に関してアンテナを張り官公需の受注を逃さないよう、官公庁の情報は逐一チェックするようにしましょう。