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東亜石油が製品試験不正に関する特別調査委員会の設置を公表

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はじめに

2022年5月6日、東亜石油は自社が保有する京浜製油所(川崎市川崎区水江町3番1号)における過去に生産した石油製品について、不適切行為の発覚とその後の対応について文書を公表しました。また、2022年5月18日、同社は「特別調査委員会の設置について」という文書を公表し、不適切行為に関する対応について説明しています。今回は、同社の不適切行為の概要について見ていきましょう。
 

不適切行為の概要

東亜石油株式会社は神奈川県川崎市に本社をかまえ、資本金84億円、従業員が計500人いるエネルギー会社です。また、同社の関連会社に東亜テックス株式会社(連結子会社)、扇島石油基地株式会社、新潟石油共同備蓄株式会社があります。今回不適切行為が発覚した京浜製油所は本社と同じく川崎市内にあり、石油製品の生産のために稼働しています。2022年3月、京浜製油所にて社内調査をしていたところ、「揮発油等の品質の確保等に関する法律」及び販売を担当する出光興産株式会社との契約に則って実施義務のあった製品試験項目の一部を実施していなかった事実が確認されました。なお、不適切行為は判明後ただちに是正され、2022年4月27日以降すべての製品において適切な製品試験が実施されるようになっているとのことです。
 

不適切行為の内容や対象となった製品

今回の不適切行為としては、①定められた測定頻度又は試験方法を遵守していないケース、②実際には測定していないにも関わらず、試験成績表に結果を記載しているケースが見られました。対象となった製品は、同製油所におけるガソリン、軽油、ノルマルヘキサン・ノルマルへプタンなど計12品目でした。なお、すでに出荷していた製品に関しては、生産のための留分の品質や精製プロセス工程の稼働状況、規格値の合否に関係する関連項目の品質について確認され、安全上問題がないと説明されています。
 

特別調査委員会の設置

東亜石油は今回の不適切行為の発覚を受け、2022年5月18日、取締役会決議により外部の専門家及び当社独立社外取締役を委員とする特別調査委員会を設置した旨文書で公表しました。調査委員会では、今回の不適切行為に関わる事実関係の調査および原因究明や再発防止策の策定・提言、その他調査委員会が必要と認めた事項の決定を担い、不適切行為の原因を速やかに調査し公表するとしています。なお、特別調査委員会の委員は、弁護士や独立社外取締役によって構成されています。

社内不祥事の調査方法と特別調査委員会の概要

社内の不祥事への対応には、社内調査、内部調査委員会、外部委員会、第三者委員会などの手続きがとられます。社内調査は担当取締役を決め、社員を中心に内部調査チームをつくり調査を行う形式です。内部調査委員会は取締役、監査役等で委員会を構成員にし、調査結果報告を委員会で取りまとめる形式です。外部委員会は委員会を全員外部の者にする形式、第三者委員会は日弁連が策定した「第三者委員会ガイドライン」に依拠して運用される形式を言います。なお、これらの委員会は「特別調査委員会」などと任意の名称で呼ばれることがあります。今回の東亜石油の調査委員会は外部の弁護士や社外取締役による調査であり、第三者委員会の形式を採っていると言えます。
 

コメント

今回の東亜石油の不適切行為は、2022年3月に社員から情報提供があったことに端を発し、社内調査が行われています。社内調査からの発見→対処の流れは速やかだったと言えますが、不適合行為自体は少なくとも5年前から行われていたとする報道もあります。不適切行為の原因が何だったのか?なぜ5年間も発覚しなかったのか?調査委員会は設置されたばかりであり、原因究明にはまだ時間がかかりそうです。同社は文書の最後に「お客様や関係の皆様には、多大なるご迷惑とご心配をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます」と述べ、顧客へのお詫びとしています。石油製品という、消費者の健康被害にも繋がりかねないデリケートな商材だけに、信頼回復には時間がかかりそうです。
 

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