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東和薬品、高コレステロール血症治療薬リバロ錠の特許権侵害訴訟に関するお知らせを公表

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はじめに

東和薬品株式会社は2022年5月24日、興和株式会社より提起されていた損害賠償請求訴訟について、原告側から控訴がなされたことを文書で報告しました。本訴訟は高コレステロール血症治療薬リバロ錠(一般名:ピタバスタチンカルシウム)の特許権侵害に関する損害賠償請求であり、2021年4月に訴訟が提起されたものです。本記事では、訴訟の詳しい経緯や内容、今回の判決と控訴について見ていきましょう。
 

訴訟の経緯

興和は2021年4月5日、東和薬品に対して「高コレステロール血症治療薬リバロ錠」の特許権侵害を理由に、損害賠償を求める訴訟を東京地裁に提起しています。興和は、東和薬品の後発品「ピタバスタチンCa・OD錠1mg/2mg/4mgトーワ」の販売(2018年4月~2019年3月)に関し、合計56億1814万円を請求していました。興和はこの訴訟の前にも、東和薬品が後発品の販売を開始した2013年12月から2018年3月までの販売分についても訴訟を提起しており、東和薬品に対する請求額は計188億円を超えるなど、高額な訴訟となっています。
 

訴訟の内容とその後

興和は請求理由について、「特定の添加物を含み、かつ、特定の水分値の錠剤が侵害している」としていました。東京地方裁判所にて同訴訟は併合審理されていましたが、2022年3月24日、東京地方裁判所(第一審)は、「本件特許権が無効とされるべきもの」との判断に基づき同社の請求を棄却する判決を言い渡しました。なお、本訴訟は損害賠償請求であり、損害賠償額の算定は特許法第102条における損害額の算定規定に基づき金額の算出が行われます。また、損害賠償請求の前提として必要な侵害者の故意・過失は、過失があったものと推定する特許法第103条の規定があるため、損害賠償請求が容易になります。 特許庁|特許権侵害への救済手続
 

リバロ錠とは?

今回、特許権侵害の有無が争われている「リバロ錠」は、国内外の多くの脂質異常症患者向けに処方されている薬で、強力な LDL コレステロール低下作用を示す HMG-CoA 還元酵素阻害剤としてストロングスタチンに位置づけられています。脂質異常改善効果に優れるほか、長期間の使用に耐えうる安全性、薬物相互作用発現の低減、糖尿病合併時の有用性等が確認されていると言われています。
 
 

特許権侵害訴訟の手続き

特許権に関する訴訟については、民事訴訟法の管轄の原則規定(民事訴訟法4条,5条)により、東日本の地方裁判所に管轄権がある場合については「東京地方裁判所」、西日本の地方裁判所に管轄権がある場合については「大阪地方裁判所」が専属管轄を有するとされています。裁判においては、専門部である知的財産部が審理を担当します。 特許権侵害訴訟では、原則として2段階審理方式が採用されており、まず第1段階で「特許権の侵害の有無」を審理し、侵害の心証を得た場合に限り、第2段階として「損害額」の審理に入るという運用となっています。ほとんどの場合は被告の製品・方法が特許発明に該当するどうか、特許の有効性はあるかどうかが判断され、争われることになります。東京地方裁判所が発表している審理モデルでは、第1回口頭弁論の終了後、おおむね5回程度の争点整理手続(弁論準備手続)で特許侵害の有無に関する審理を終えられるように進行することを想定しています。 判決に不服のある原告または被告は、知的財産高等裁判所に控訴することが可能です。今回の件では、興和が不服を申し立てて控訴しています。
 

コメント

東和薬品によると、興和が控訴を申し立てた理由はの第一審判決の内容への不服によります。東和薬品は、本訴訟とは別に特許庁において係属中の無効審判請求と並行して、引き続き控訴審においても本件特許権の無効を主張して争っていく方針を明らかにしています。東和薬品が現在製造販売しているピタバスタチン Ca・OD 錠 1mg/2mg/4mg「トーワ」は、製剤処方の変更を実施済みであり、本件訴訟の対象とはなっていません。訴訟内容が多額であり、4件の訴訟がなされた今回の特許権侵害訴訟でしたが、今後は知的財産高等裁判所で両者が争うことになります。
 

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