はじめに
ソフトウェア開発等を手掛ける富士ソフトは1日、株主である3Dオポチュニティマスターファンドから臨時株主総会の招集請求を受けたことを発表しました。議題は社外取締役選任についてとのことです。今回は会社法の株主総会招集について見ていきます。
事案の概要
富士ソフトの発表によりますと、1日、同社の株主である3Dオポチュニティマスターファンドから臨時株主総会招集請求書を受領したとされます。3Dオポチュニティマスターファンドはシンガポールに拠点を置く運用会社で、富士ソフトの総株主の議決権の3%以上の議決権を6ヶ月前から引き続き保有している株主とされ、臨時株主総会の目的は社外取締役4名の選任とのことです。候補者は第一勧業銀行出身で伊藤忠商事の最高情報責任者の経歴を持つ石丸慎太郎氏などとされます。富士ソフトは今回の請求に対する対応方針について、請求内容を慎重に検討の上、決まり次第発表するとしております。
株主総会の招集
株主総会の招集権者は原則として取締役となっております(会社法296条3項)。一般的には代表取締役が招集するとされ、代表権の無い取締役によって招集された株主総会は無効と言われております。株主総会を招集するには、株主総会の日時と場所、目的がある場合はその事項、書面または電磁的方法により議決権を行使することができる場合はその旨、その他について取締役会設置会社の場合は取締役会で決定する必要があります(298条1項、3項)。招集は公開会社で2週間前まで、非公開会社では1週間前までに通知する必要があり、取締役会設置会社では原則として書面または電磁的方法によって行います(299条2項2号、3項)。取締役会非設置会社の場合は通知方法について特に定めはありませんが、書面・電子投票を採用する場合はやはり書面または電磁的方法による必要があります。
株主による招集請求
このように原則として株主総会の招集は取締役によって行われますが、一定の場合には株主によって招集請求をすることができます。会社のために特に必要である場合や、定時株主総会開催の時期であるにも関わらず代表取締役が招集しないといった場合に、株主が主体となって開催できるようになっているというわけです。公開会社の場合は議決権の3%以上の議決権を6ヶ月前から引き続き保有する株主が招集請求することができます(297条1項)。非公開会社の場合は保有期間による制限はありません(同2項)。公開会社のこのような保有期間による制限は、濫用的な招集請求を防止することが目的と言われております。非公開会社の場合はそもそも株主となるためには会社による承認が必要であることから、それによって防止されていると考えられております。
株主による招集
株主が会社に対して株主総会の招集請求を行ったにもかかわらず、会社が遅滞なく招集手続きを行わない場合、または招集請求の日から8週間以内の日を株主総会の日とする招集通知が発せられない場合は、請求を行った株主は裁判所の許可を得て株主総会を開催することができます(297条4項)。株主から裁判所に申し立てがなされた場合は審尋が行われ、株主、会社両者の意見を聞き、また会社法所定の招集要件等を満たしているのかなどが確認されることとなります。そして審尋の結果要件が満たされていると判断された場合、株主総会招集許可決定が出されます。これにより株主が株主総会を招集することとなります。なおこの場合の株主総会での議長は招集した株主が決めることとなります。
コメント
本件で公開会社である富士ソフトの株主である3Dオポチュニティマスターファンドは同社の株式を議決権割合で3%以上を6ヶ月前から引き続き保有しているとされ、株主総会招集請求の要件は満たすものと言えます。今後会社によって遅滞なく招集手続きがなされない場合、または請求日である9月1日から8週間以内の日を開催日とする通知が発せられない場合は裁判所の許可を得て3Dオポチュニティ側が招集するものと見られます。以上のように株主総会は原則として代表取締役が招集することとなりますが、特に必要な場合や、会社が適法に開催しない場合には一定の要件を満たす株主が招集することができます。株式保有割合や6ヶ月制限などもありますが、会社としては裁判所の審尋で濫用的招集である旨の反論を行うことも多いと言えます。株主による招集の手続きの流れや会社の対応を確認しておくことが重要と言えるでしょう。