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TwitterやMetaなど、米IT大手で人員削減の動き/「レイオフ」とは

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はじめに

11月4日、アメリカのIT企業・Twitter社が人員削減、すなわち“レイオフ”を行い、従業員の半数が予告なしに解雇されました。イーロン・マスク氏がCEOに就任した直後に起きた衝撃でしたが、この動きはアメリカ国内にとどまらず、日本にも波及。Twitter上で「ツイッター社を退社します」という社員の投稿が目立ちました。 この5日後の9日、InstagramやFacebookを運営するMeta社もレイオフを実施すると発表。会社HPでは、マークザッカーバーグCEOが「レイオフの対象は、社員全体の13%、11000人以上にのぼる」とする文書を掲載しました。 この大規模解雇の背景には財政的な理由などがあると言われています。 イーロン・マスク氏はツイッターで、「1日に400万ドル(日本円約6億円)以上の赤字を出しているため、他に選択肢がなかった」と投稿しています。
 
https://twitter.com/elonmusk/status/1588671155766194176?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1588671155766194176%7Ctwgr%5E144ad7eb33cfe99387636910b141ca7558d53485%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https%3A%2F%2Fwww.gizmodo.jp%2F2022%2F11%2Ftwitter-half-of-employees-got-fired-but-came-back.html
 
また、Meta社もマーク・ザッカーバーグCEOが注力するメタバース部門に先行投資を行なったものの巨額の損失を出したと報告されております。実際、9月の新規採用を行わなかったほか、経費削減のため、会社の規模を縮小する可能性にも言及していました。ザッカーバーグ氏は「優先順位の高い少数の成長分野に投資を集中させる」と発表し、2023年末にはMeta社の規模が「現在とほぼ同等か、僅かに縮小した組織になる」と発言していました。 レイオフ について(Meta) メタ社 メタバース先行投資失敗(COIN POST 掲載記事)
 

レイオフとは

レイオフとは、「一時的な“整理解雇”」を指し、欧米などで主に使用されている雇用調整施策です。 日本では聞き慣れない言葉ですが、近年、新型コロナウイルス感染拡大の影響で経営が厳しくなった飲食店などで実施されており、日本でもレイオフを行う企業が増えたと言われています。 上述のように、レイオフは、日本における解雇の3類型(普通解雇、懲戒解雇、整理解雇)のうち、“整理解雇”の一種に分類されます。

●普通解雇 能力不足、業務に関連のない場所で怪我をし、働けなくなった場合の解雇   ●懲戒解雇 犯罪などの違反行為を行った従業員に制裁罰として行われるもの   ●整理解雇 不況や経営不振などの理由により、解雇せざるを得ない場合に人員削減のために行う解雇。リストラやレイオフが該当。

ただし、整理解雇は会社側の一方的な事情での解雇となるため、会社側がいつでも自由に行えるというものではありません。解雇が正当かどうか、最終的には裁判所において判断されます。その際、判断基準として、以下の4要件に照らし合わせて審査されます。 (1)人員削減の必要性 人員削減措置の実施が不況、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていること (2)解雇回避の努力 配置転換、希望退職者の募集など他の手段によって解雇回避のために努力したこと (3)人選の合理性 整理解雇の対象者を決める基準が客観的、合理的で、その運用も公正であること (4)解雇手続の妥当性 労働組合または労働者に対して、解雇の必要性とその時期、規模・方法について納得を得るために説明を行うこと 労働契約の終了に関するルール(厚生労働省)
 

レイオフとリストラの違い

レイオフとリストラはどちらも解雇されることでは変わりありませんが、リストラは「永久解雇」、であるのに対し、レイオフは「一時解雇」です。 レイオフは業績が悪化した企業が人件費を削減するために応急処置的に行うものです。一時的な雇用停止のため、企業の業績が回復すれば再雇用の可能性があります。優秀な人材などの流出を防ぎながら、業績回復のための人件費の抑制が可能となります。 また、レイオフと似ているもので「一時休業」と呼ばれる制度もあります。「自宅待機」とも言われますが、目的はレイオフと同様に、優秀な人材を留保するため。しかし休業であるため、企業と従業員の雇用関係は維持され続けるのが特徴です。
 

失業保険はもらえないかもしれない

解雇された場合に受給することができる「失業保険」ですが、一時解雇「レイオフ」された場合、受け取れない可能性があるとされています。失業保険の受給条件は主に2つあります。 1.就職の意思があり、いつでも就職できる状態である 2.一定期間の雇用保険の被保険者期間である
 
一方で、再雇用を前提に解雇されている場合、失業したと認められないケースがあるということです。また、仮に受給が認められた場合でも、受給期間中は継続的に求職活動を行う必要があるほか、会社に復帰できるタイミングが見通せないため、給付期限内に会社に復帰できなければ、以後は収入がなくなる恐れもあります。 実際に2020年、新型コロナで経営が厳しくなった東京都内のタクシー会社が、全従業員をレイオフ。その従業員らに失業保険の受給を勧め、問題となりました。 報道によれば、この件について東京労働局職業安定部の担当者は次のように指摘しています。
 
「雇用保険の受給資格を有する方の定義は、現に元の会社と雇用に関する契約が完全に失効していて『積極的に求職活動をし、いつでも就職可能』な環境にある方を指します。元の会社に早期に戻ることが約束された状態では、そもそもこの受給資格を満たしていません。」 ロイヤルリムジン、全乗務員一時解雇し失業保険勧める→労働局「受給資格を満たさず」(Business Journal)
 
また、会社が罰金を命じられる可能性もあります。すなわち、仮に会社側が「同一事業所への再雇用」を前提として失業保険を受給させた場合、「不正受給」となり、受給した金額の3倍を罰金として支払わなければならなくなる可能性があるということです。 必ずしも違法と認定されるわけではないということですが、レイオフ実施の際にはその点の十分な検討も必要となります。
 

コメント

終身雇用制度が一般的であった日本で、「レイオフ」を活用する企業が現れ始めました。世界情勢の不安定化や円安の進行など、企業を取り巻くビジネス環境は不確実なものとなって来ています。そのため、どの企業においても、「一時的に人件費を削減しつつ、優秀な社内人材を繋ぎ止めたい」というニーズが生まれる可能性は否定できません。一度、自社で「レイオフ」を実施する場合の運用をシミュレートしておくのもよいかもしれません。
 

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