はじめに
着物レンタル事業などで知られる株式会社和心(東証グロース上場)は、12月16日、同社店舗の賃貸借契約を結んでいた株式会社ラウンドタートルから提起されていた訴訟について調停により解決したと発表しました。調停内容としては、和心がラウンドタートルに対して解決金486万円を支払い、ラウンドタートルが訴えを取り下げるというものです。本記事では、このコロナ禍の経営不振を原因とした退店トラブルについて解説します。事案の概要
株式会社和心は、和小物の販売事業や着物レンタル事業を手掛ける企業です。新型コロナウイルス感染症の拡大により売上が厳しい状態が続いた和心は、店舗不動産の賃貸人である株式会社ラウンドタートルに賃料の減額を申し入れました。この申し入れをラウンドタートルは了承し、覚書を締結しています。しかし、その後も和心の売上の回復が見込めなくなったことで、店舗営業の継続は難しいと判断。ラウンドタートルに対し、退店の申し入れを行いました。 これを受けて、2022年1月11日、ラウンドタートルは和心に対し、減額前の賃料との差額および退店通知日以降の賃料(減額前の金額)総額として、金1,212 万円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求め、京都地方裁判所に提訴しました。賃料の支払いと民法
新型コロナにより緊急事態宣言などが発令されたことで一時的に営業ができなくなったり、時間制限が設けられ、多くの飲食店や小売業が影響を受けました。店舗営業を一時的にストップせざるを得なくなった企業や、閉店や撤退を決意し退去したというケースも多いのではないでしょうか。コロナ以外でも、豪雨による雨漏りや、地震による損傷で営業ができなくなる場合もあります。そうした際、賃料の法的な取り扱いはどうなるのでしょうか。 まず、民法上、賃借建物の賃借人が同建物で営んでいる事業の不振により売上が減少したとしても、それは賃借人が負担すべき事業リスクに過ぎないとされています。また、賃借人は、「不可抗力」をもって、賃料債務の支払い遅延に対する遅延損害金の支払いを免れることができないと明示されています。(民法419条3項) すなわち、賃借建物の賃借人には、コロナ禍の経営不振を理由に賃料の減額や支払猶予を求める権利は民法上ないことになります。 一方で、改正民法611条では賃借物の一部が壊れるなどして営業できなくなった場合、その原因が賃借建物の賃借人の責任でないときは、賃料はその使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて減額されるとしています。地震等の災害で建物の一部が損壊した場合などに適用されます。 具体的には、「一定期間少なくとも建物の一部について占有が不能となり使用ができないのと同様の障害が生じ、社会通念上賃料全額の支払いを求めることが相当でないと判断される場合(東京地裁平成15年7月15日)」に賃料減額が認められ、減額の度合いはどのような不具合があるかにより変化します。 Image may be NSFW.Clik here to view.
