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4月より“給与デジタルマネー払い”制度がスタート

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はじめに

今年4月から従業員の給与をデジタルマネーで支払う制度が施行されます。これまで労働基準法では、賃金の現金払いを原則としつつ、従業員と企業間の合意により銀行・証券総合口座への振り込みも認められるという建てつけとなっていました。今回の新制度施行により、銀行口座等への振り込みに加えて、スマートフォンの決済アプリや電子マネーを利用して振り込むことができるようになります。 後述の事情により、実際に企業がデジタルマネーでの給与支払いを開始できるのは、もう少し先になりそうですが、4月にはデジタルマネーを運営する企業を対象に、「資金移動業者」としての申請受付が開始されます。 導入までおよそ1ヶ月、デジタルマネー払いが始まった場合、企業として対応が大きく変わることになります。今回の記事では、間もなく導入される給与デジタルマネー払い制度について確認していきます。
 

給与デジタルマネー払い制度の内容は?

新型コロナウイルス感染拡大をきっかけにデジタルマネーを利用したキャッシュレス決済の普及が一気に進みました。消費者がコンビニなどでスマートフォンをかざして商品を購入するシーンも珍しいものではなくなっています。 こうした背景を受け、厚生労働省の労働政策審議会分科会は、2022年10月26日、労働基準法の省令改正案を了承。企業が銀行等の口座を介さずデジタルマネーを利用して給与を振り込むことができる“給与デジタルマネー払い制度”の施行が決定されました。 施行後は、政府が認定した運営会社が取り扱うデジタルマネーの口座に給与を振り込むことができるようになります。また、給与の一部をデジタルマネーで支払い、残りを銀行口座で支払うといった対応も可能になるとされています。 資金移動業者として認められるのは、金融庁に「第2種資金移動業」として登録し、なおかつ、厚生労働省からも「指定資金移動業者」として認められた運営会社です。 金融庁の第2種資金移動業は、送金が1回につき100万円以下となっています。すでに金融庁に登録されている企業は以下のページで確認できます。 金融庁 資金移動業者登録一覧 企業が給与のデジタルマネー払いで利用できるデジタルマネーの種別は、今後、どの運営会社が名乗りを上げるのか、また、厚生労働省がどの運営会社を「指定資金移動業者」として認定するのかにより決まりますが、その審査プロセスのファーストステップとして今年4月にデジタルマネー運営会社向けの申請受付が開始されます。 厚生労働大臣が指定した資金移動業者は、指定が行われ次第、厚労省のホームページにて掲載されます。 決定までは少なくとも数ヶ月はかかると言われていて、企業が実際に運用を開始するのはしばらく先と言えるでしょう。 厚労省 概要と経緯 なお、今回の改正において、現金化できる資金移動業者の口座への給与支払いを選択肢として追加するものであり、現金化できないポイントや仮想通貨などでの給与支払いは認められていません。
 

導入での注意点は

では実際に運用開始された際に、どういった点に注意が必要なのでしょうか。 ■受け取り口座残高について 今回、給与受け取りのためのデジタルマネー口座に入金しておける金額につき、「100万円まで」という上限が設けられました。万が一口座残高が100万円を超えた場合、資金移動業者は即座に別の銀行口座などへ自動送金するなどして、口座残高を100万円以下に保たなければなりません。 そのため、デジタルマネーで支払われた給与については、預貯金目的というよりは、日常の買い物目的等で使用されることが想定されます。 なお、デジタルマネー口座を利用するにあたり、資金移動業者の経営破綻が不安材料となりますが、経営破綻時の全額払い戻し保証が用意されている会社のみが厚生労働省から資金移動業者として指定される形となっているため、そのリスクはかなり抑えられそうです。 ■従業員との合意が必要 給与のデジタルマネー払いが認められるのは、従業員の同意がある場合に限られ、従業員が希望しない場合には、従来どおり銀行口座等を介して給与を支払うことになります。 そのため、自社にて給与デジタルマネー払い制度を導入する場合は、導入に先立ち、労働組合や従業員と協議・検討のうえ、デジタルマネーで払う対象範囲、利用するデジタルマネー運営会社などをを定めた労働協約を締結する必要があります。締結の際は、留意事項の説明などを漏れなく行い、従業員がデジタルマネー払いを希望するか否かを確認するプロセスを怠らないことが重要になります。 なお、従業員の同意を取得する際は、「同意書」が必要となります。厚労省のホームページでは企業と従業員の間で結ぶ合意書の参考例を掲載しています。 資金移動業者口座への賃金支払に関する同意書
 

コメント

現在、巷では、デジタルマネー払いはクレジットカード払いに次いで利用数の多い決済方法となっています。デジタルマネー払いを利用できる店舗やサービスも増えている中で、今回の給与デジタルマネー払い制度の導入は自然な流れなのかもしれません。 厚生労働省は今月、弁護士や会計士、金融業界の経験者などで構成する専門の部署を設ける予定だそうです。部署では主に、資金移動業者の審査を行うそうですが、給与デジタルマネー払い制度を導入する企業への相談にも応じるとしています。 今後、遅かれ早かれ、各社で給与デジタルマネー払い制度が導入されて行くと予想されます。企業として、同制度にどのように対応するのか、今から準備・検討してみてはいかがでしょうか。
 

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