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実質0円マウスピース矯正、診療所閉鎖で集団訴訟

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はじめに

「実質無料」の言葉を信じて高額費用を支払ったのに・・・。歯並びをきれいに整えたい、かみ合わせを改善したいなどの理由で始める人の多い“歯科矯正”。コロナ禍でマスクを常時着用する風潮があった中、矯正中であることがバレにくいと、治療を検討する人が増加したと言われています。しかし、美容目的での歯科矯正の場合、保険診療の適用外となるため、治療費の高さがネックとなり、踏み出せない人も少なくありません。 そんな中、ある歯科医院では普段高価な施術費用を、“モニター”になることで低く抑えることができると謳いました。 多数の希望者がモニター契約を締結し治療を開始。しかし、歯科矯正を開始したものの、結果的に高額の費用を払わされたうえ、治療を中断され健康被害が出たことなどから、歯科医院を相手取った集団訴訟に踏み切りました。 モニターモデル契約に潜む注意点や、その他のトラブル例なども紹介していきます。
 

患者らが提訴、請求総額4億円以上に

6月6日、「マウスピース矯正、実質無料」を謳った歯科医院と高額なローン契約を結んだものの、医院閉鎖で施術が受けられなくなったとして、男女約150人が、歯科医院やその運営会社などに対し、約2億6200万円の損害賠償を求める訴えを東京地方裁判所に提起しました。提訴したのは、東京や福岡などで展開する歯科医院に通っていた全国各地の男女およそ150人(以下「原告ら」)です。 原告らは、「歯科医院のモニターになり写真提供やSNSでの宣伝に協力することで、治療費を全額返金する(実質無料となる)」などと持ちかけられ、歯科医院と診療契約を締結していました。治療費は約150万円にのぼり、中には36回ローンなどを組んで支払いを行った人もいたといいます。 さらに、原告らは合わせて別会社とモニターモデル契約を締結。診療時の写真提供やSNSでの宣伝に協力することで、毎月一定額の報酬を送金アプリで受け取る内容だったといいます。当初は契約どおり報酬の支払いが行われていたそうですが、昨年3月以降、「ロシアによるウクライナ侵攻で海外口座の資金が動かせなくなった」などとして、報酬が支払われなくなったということです。 原告の中には、報酬の支払いが止まり多額のローンだけが残された人、歯科医院の閉院により治療が中断し、歯並び悪化などの健康被害が出た人などがいるといいます。 この歯科医院などに関しては、今年1月26日にも同様に患者らが集団訴訟を提起しており、今回の追加訴訟で原告の数は合わせて約300人、請求総額は約4億5900万円にのぼっています。さらに、4月には、詐欺罪などで医療法人の理事長らが刑事告訴されています。
 

モニターモデル契約とは

今回の事件で原告らが結んだとされる、モニターモデル契約。いわゆる“モニター契約”の一種ですが、歯科矯正以外にも、脱毛や整形の施術などで、度々、目にされています。 一般的には、自社の商品やサービスを周知するべく、企業と広告モデル(個人または団体)との間で締結される契約です。契約締結後は、広告モデルが商品を使用したりサービスを受ける様子が写真や動画で撮影され、それらがテレビや雑誌、ウェブサイト、SNSなどで利用されます。契約書では、 ・撮影された写真や動画が掲載されるメディア名、それらが広告として使用される期間 ・肖像権・著作権などの権利の使用に関する取り決め ・競合他社との契約制限 ・秘密保持条項 ・報酬(広告の露出の度合いに応じて追加報酬が支払われる場合はその旨) などの内容を取り決めることが多いとされています。 しかし、こうした“モニター契約”を利用した悪質商法も多く報告されており、消費者庁でも「モニター商法」として注意喚起しています。

【モニター商法の例】 (1)浄水器を購入の際、「モニターとなり、毎月の簡単なアンケートに回答すれば、モニター料が支払われ、浄水器代として支払った金額以上の収入がある」と勧められて契約したものの、モニター料が支払われなかった事例。 (2)「美容器具や健康器具を購入して、使い心地を毎月レポートすると月額5,000円が返金される」と勧誘され、高額な商品を購入したものの、実際には、レポートに対して難癖をつけられ返金がされなかった事例。

モニター商法のように、勧誘時の業者側の「不実告知」や「重要事項の故意の不告知」により、消費者が誤認して行った意思表示は、後日取り消すことができるため、訴訟に発展する例もあります。
 

コメント

今回の事件では、患者の中に、“矯正をしてはいけない人”も含まれていた可能性も指摘されていて、モニターモデル契約以外にもさまざまな問題が見え隠れしています。すでに詐欺容疑での捜査も開始されており、今後被害者にどのような救済措置がとられるのか注目されます。
 

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