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首都高3人死亡事故、逮捕のトラック運転手が前日に「体調不良」と点呼/運送業者の点呼義務

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はじめに

首都高速道路美女木ジャンクション付近で、5月14日、大型トラックが渋滞の列に追突し、3人が死亡、2人がけがをした事故が発生しました。逮捕された大型トラックの運転手の男は、当時、38度を超える発熱があり、風邪薬を服用していました。また、追突する前から「意識がなくなった」と供述していることがわかりました。 一方で、男が運転する前、法律で義務付けられている「点呼」での体調確認は行われなかったということで、会社の安全管理体制が問題視されています。
 

風邪薬服用し運転。追突時は“意識なかった”

事故は、5月14日午前7時半頃、埼玉県戸田市の首都高速5号池袋線美女木ジャンクション付近で発生しました。 乗用車やトラック合わせて7台が絡んだ事故は、追突された乗用車が炎上。乗車していた3人が死亡したほか、 別のトラックに乗っていた2人が軽いケガを負いました。 当時、現場は美女木ジャンクションへ進入する車が左車線で渋滞していました。そこへ大型トラックが時速約77キロで減速しないまま、渋滞最後尾の乗用車に突っ込んだということです。 警視庁は大型トラックを運転していた男を自動車運転死傷行為処罰法違反容疑(過失運転致死容疑)で現行犯逮捕しました。 警察の調べで男は容疑を認め、「ぶつかったときに意識がなかった」と話しているということです。 男は運送会社に勤めていて、事故当時は仕事のためトラックを運転していました。しかし事故数日前から体調が悪く、当日、38度を超える発熱があったということです。 しかし、男は「仕事は休めない」と判断。終業後に病院へ行くつもりで、午前4時の仕事開始直前に風邪薬を服用し、トラックに乗り込んだということです。
 

事故前日の点呼で体調不良訴えていた

今回の事故では、会社の責任を問う声も上がっています。 貨物自動車運送事業法第7条では、国の安全規則として、運送事業者に対し、運転者の体調や疲労具合を運転前などに確認する「点呼」が義務付けられています。 点呼は以下のような違反や事故を防ぐために実施されています。 ・悪質違反(酒気帯び・薬物等)を防ぐ ・健康起因事故を防ぐ ・車両故障事故を防ぐ  など 点呼には、乗務前点呼・中間点呼・乗務後点呼がありますが、例えば、乗務前点呼では、運転者名、乗務する車両の登録番号、酒気帯びの有無、疾病・疲労等の状況、日常点検の状況などを確認し記録することが義務付けられています(貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条)。 しかし、逮捕された男は、事故当日「(乗務前の)点呼を受けていない」と説明。また、事故前日の乗務後点呼の際に、会社職員に対し「体調が悪い」と伝えていたことが報じられています。会社側が男の体調不良を認識していたにも関わらず、休ませるなどの対応を取らなかった可能性が指摘されています。 こうしたことから、警視庁は運送会社の管理体制に問題があったとして、会社を家宅捜索しました。運行記録などを押収し、さらに詳しく調べるとしています。
 

過去にも点呼の不実施が事故を招いた事例も

点呼が機能していない、又は実施されていないことで事故の発生に繋がった事例が過去にもありました。 2018年2月15日、午前8時前、愛知県の国道で、大型トラックが、赤信号で停止中の車列の最後尾の普通トラックに追突し、合計6台の車が絡む多重衝突事故が発生しました。 この事故で、軽乗用車の運転者が死亡したほか、複数人がケガをしました。 この事故を招いた要因の一つが「点呼の不実施」とされています。 この事例では、今回の美女木ジャンクションでの事故と同様に、大型トラックの運転者が、事故前日から体調不良がありつつも運転していました。 この運転者がほぼ毎日・午前3時ごろに乗務を開始していたことから、会社では、事故の約2ヵ月前から乗務前点呼を行っていなかったということです。 その結果、事故当日も乗務前点呼は行なわれず、会社は運転者の体調不良を覚知することができませんでした。 国交省は事故後の報告書の中で、会社側が点呼などを実施しなかったことが事故に繋がった原因の一つだとして、会社側に再発防止を求めました。
 

コメント

物流業界では2024年4月から働き方改革関連法が施行され、時間外労働の上限規制等が適用されました。一方でこの法改正によって、いわゆる「2024年問題」として、運送会社の売り上げ減少や、担い手不足などが懸念されています。そんな中で発生した今回の事故。 安全対策が後回しになりがちな業界の構造上の問題を指摘する専門家がいる一方、現場からは、人手不足下で、会社が新たに「点呼者」を雇い、早朝深夜の業務を行わせることは非現実的だとする声もあがっています。 運転者の健康面等の確認が不十分なまま乗務を許した場合、ときに人命が失われるような重大な事故に繋がりかねません。同様の事故が繰り返されないよう、システム導入による点呼業務の効率化など、実効性の高い再発防止策の策定と、業界全体の安全意識の向上、法令遵守が求められています。
 

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