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スラムダンク映画ポスターに酷似?政策ビラで著作権法抵触か/著作物の翻案権とは

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はじめに

 先日の栃木県鹿沼市長選挙で落選した候補陣営が配布した政策ビラのイラストが、人気漫画「スラムダンク」の映画ポスターに酷似しており著作権法に抵触する可能性が指摘されております。ビラには茂木自民幹事長らが描かれているとのことです。今回は著作物の翻案権について見ていきます。
 

事案の概要

 報道などによりますと、問題となった政策ビラは白地に黒い文字で「KANUMA!!!!!!」、赤い文字で「総力結集」と書かれており、その上にバスケットボールのユニホーム姿の候補と自民幹部ら4人が描かれております。また下部には「あきらめたらそこで鹿沼が終わる」とも記載されており、デザインの構図や人物のポーズなどが映画「THE FIRST SLAM DUNK」のポスターに酷似していると指摘されております。同ビラを作成した陣営幹部は、「他県の商店街が同様のポスターを使用しているのを参考に、若いスタッフが作成したようだ」とし、著作権法上問題があるかどうかについては思い至らなかったとしているとのことです。
 

著作権と支分権

 これまでも取り上げてきたましたように、著作権は著作者が著作物を創作した時点で自動的に発生します。この点は登録しなければ発生しない特許権などと大きく異なるところです。そして著作者の権利は大きく著作権と著作者人格権に分けられます。著作者人格権とは、著作物の創作者が作品に対してもつ人格的利益を保護する権利とされ、公表権や氏名表示権、同一性保持権などが含まれます。著作者人格権が言わば精神的な権利と言えるのに対し、著作権は著作物に対する財産的な権利と言えます。そして著作権は様々な権利の複合体であり、著作権に含まれる細かな権利を支分権と呼びます。この支分権には、複製権、上演権、公衆送信権、貸与権、翻案権、二次的著作物の利用に関する権利などが挙げられます。以下翻案権と複製権について具体的に見ていきます。
 

翻案権とは

 著作権法27条では、「著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する」としております。翻案とは著作物をアレンジすることと言えます。音楽の場合は編曲とも呼ばれます。小説を映画化したり、漫画をアニメ化したり、音楽をカバーするといった行為が典型例です。それでは翻案とは具体的にどのような場合に認められるのでしょうか。判例によりますと、「翻案…とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう」としております(最判平成13年6月28日)。つまり原著作物の本質を維持しつつ、それに改変を加え、新たな二次著作物を創作することと言えます。
 

複製権とは

 それでは複製権とはどのようなものなのでしょうか。著作権法21条では、「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する」としております。そして2条1項15号では、複製とは「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること」としております。また判例では、「既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製すること」とされております(最判昭和53年9月7日)。つまり既存の著作物と同一性が認められる必要があります。翻案は既存の著作物と同一性が認められる範囲内で改変を加える点が異なります。なお複製に関しては、個人的にまたは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使用することを目的とする場合は複製を行っても著作権侵害とはなりません(30条1項)。
 

コメント

 本件では映画「THE FIRST SLAM DUNK」のポスターと文字の配置や色合い、キャラクターの配置やポーズがほぼ同一で、キャラクターの顔だけが自民党幹部ら4人と候補のものに置き換わっております。また「あきらめたらそこで鹿沼が終わる」というキャッチフレーズも同漫画の有名なセリフを彷彿とさせるものとなっており、本質的な特徴の同一性が認められる可能性が高いと言えます。以上のように翻案権は著作権者が専有しております。インターネット上などでは漫画やアニメ、ゲームなどの二次創作物が溢れておりますが、原則的にはそれらは著作権者の翻案権を侵害しており、事実上黙認されているだけとも言えます。有名な作品のポスターなどを参考にする際には、既存の著作物の本質部分で同一とならないよう留意して制作していくことが重要と言えるでしょう。
 

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