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まもなく施行、改正雇用保険法について

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はじめに

 雇用保険の適用拡大やリスキリング支援の充実を内容とする改正雇用保険法の一部が間もなく施行されます。多様な働き方を効果的に支援することが目的とされます。今回は改正雇用保険法の概要を見直していきます。
 

改正の経緯

 近年、働き方改革や新型コロナウイルスの感染拡大などを経て、働き方に対する多様な価値観やライフスタイルが見られるようになりました。そのような状況のなかで、労働者がその希望と状況などに応じて持てる能力を十分に発揮できるよう効果的に支援し、労働者の主体的なキャリア形成を支えることを目的として令和6年5月10日に改正雇用封建法が、6月5日に改正子ども・子育て支援法等が国会で可決成立しました。これにより雇用保険の適用範囲の拡大や教育訓練、リスキリング支援の充実、育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保、こども未来戦略のに盛り込まれた施策を着実に実施するための共働き、共育ての推進に必要な措置に関する改正が盛り込まれております。以下具体的に見ていきます。
 

改正の概要

(1)雇用保険の適用拡大  まず雇用保険の被保険者の要件のうち、週所定労働時間が「20時間以上」から「10時間以上」に半減します。雇用労働者の中で働き方や生計維持のあり方の多様化が進展していることを踏まえ、雇用のセーフティネットを拡げることが狙いです。これにより適用対象が拡大されます。具体的には、被保険者期間の算定基準について、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上または労働時間数80時間以上ある場合を1月とカウントしていたところを6日以上または40時間以上と半減します。失業認定基準についても1日の労働時間4時間未満から2時間未満となります。 (2)教育訓令やリスキリング支援の充実  自己都合で退職した労働者でも、雇用の安定・就職の促進に必要な職業に関する教育訓練等を自ら受けた場合には給付制限なしに雇用保険の基本手当を受給できるようになります。なお自己都合で退職した者に関する給付制限期間も原則2ヶ月から1ヶ月に短縮されます。また教育訓練給付金について、訓練効果を高めるためのインセンティブ強化のため、雇用保険から支給される給付率を受講費用の最大70%から80%に引き上げるとされます。教育訓練の受講後に賃金が上昇した場合、専門実践教育訓練給付金が更に10%追加で支給されることとなります。そして自発的な能力開発のため、被保険者が在職中に教育訓練のための休暇を取得した場合、その期間中に生活を支えるため、基本手当に相当する新たな給付金も創設されるとのことです。 (3)育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保  育児休業給付については、育児休業の取得者数増などを背景に支給額は年々増加しており、財政基盤の強化が急務とされてきました。今回の改正で男性育休の大幅な取得増等に対応できるよう、育児休業給付を支える財政基盤を強化するため、令和6年度から国庫負担割合を現行の80分の1から8分の1に引き上げ、保険料率は現行の0.4%に据え置きつつ今後の保険財政の悪化に備えて、本則料率を令和7年度から0.5%に引き上げるとともに、実際の料率は保険財政の状況に応じて弾力的に調整する仕組みを導入するとのことです。
 

施行期日

 これら一連の雇用保険法等の改正項目の施行期日については、教育訓練給付金の雇用保険から支給される給付率を70%から80%引き上げる点については今年令和6年10月1日から施行となります。自発的な能力開発のための在職中の訓練休暇への給付金創設については令和7年10月1日に、雇用保険の適用拡大については令和10年10月1日から施行となります。育児休業給付に関する財政運営強化に関する一部とその他雇用保険制度の見直しの一部は既に施行済みとなり、これら以外については令和7年4月1日に施行となります。
 

コメント

 今回の改正雇用保険法等については、教育訓練やリスキリング支援に関する事項の一部がまもなく施行となる予定です。それ以外については上でも触れたように一部は公布と共に施行となり、それ以外は順次施行されていく予定となっております。今回の改正は多様な働き方や高齢者の労働参画の増加など様々な現在の事情を背景に、労働者が安心して再就職活動などに取り組めるよう支援策が盛り込まれております。特に大きな点としては自己都合退職であった場合でも教育訓練を受講した場合には給付制限がなくなる点が挙げられます。労働者それぞれの実情に即した能動的で積極的なキャリア設計を後押ししております。労働者にはどのような支援が用意され、どのような選択肢があるのかを把握し、従業員の働き方を柔軟に模索していけるよう周知していくことが重要と言えるでしょう。
 

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