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運送業者への時間外費不払い、イトーキに独禁法“物流特殊指定”に基づく警告 -公取委

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はじめに

オフィス家具大手の株式会社イトーキ。そのイトーキが家具の配送などを委託していた事業者に時間外費の一部不払いなどを起こしていたことがわかりました。公正取引委員会は11月28日、独占禁止法違反に当たるおそれがあるとして、イトーキに警告を行いました。 今回の警告は独占禁止法の「物流特殊指定」に基づいて行われたもので、15年ぶりだということです。物流特殊指定についても後半で解説していきます。
 

時間外費など不払いで警告

公正取引委員会の発表によると、イトーキは全国の企業や行政機関から発注を受けたオフィス家具の運送、搬入、組立て、据付けおよび搬出の業務を約20社の運送事業者に委託していたといいます。 その中で、年度末の繁忙期などに委託先の運転手が契約で定めた8時間を超えて働いた際、一部、時間外費(基礎作業時間を超えて行われた業務に支払われる加算額)を支払わなかったとされています。超過作業は数時間に及ぶケースもあったということです。 さらにイトーキは運送事業者に対し、 ・物流拠点で家具などの商品をトラックへ積み込む ・段ボールや緩衝材を物流センターで引き渡す といった配送業務以外の作業も、無償で夜遅くに行わせていたといいます。 公正取引委員会は「イトーキの行為は、物流特殊指定第1項第6号に該当し独占禁止法第19条の規定に違反するおそれがある」と判断。今後、同様の行為を行わないよう警告しました。 イトーキ側は、運送事業者に無償で行わせていた役務に対する対価を過去に遡って支払うとのことです。また、運送事業者との取引条件を見直して書面により明確化するなどの措置を講じるとしています。 イトーキによる時間外費の不払いは長年にわたり続けられてきたと報じられています。 多くの運送事業者は、委託契約開始当初から無償の役務提供を強いられていたものの、発注量の減少や契約打ち切りをおそれ、イトーキの要求に従っていたということです。
 

物流特殊指定について

今回、イトーキが受けた警告は「物流特殊指定」に基づいて行われています。この指定による警告は15年ぶりだといいます。 「物流特殊指定」は、独占禁止法第2条9項第6号(不公正な取引方法)に基づき公正取引委員会が指定したもので、物流業界において優越的な地位に立ちやすい“荷主”について、特定の取引を取り締まる目的で定められています。 この指定で規制の対象となるのは、次の二つの条件を満たす取引です。 (1) 荷主が物流事業者に対して直接委託する場合 (2) 荷主の子会社が物流事業者に対して再委託する場合 そして具体的に規制される取引は全部で9つあります(物流特殊指定第1項)。 一 代金の支払遅延 二 代金の減額 三 買いたたき 四 物の購入強制・役務の利用強制 五 割引困難な手形の交付 六 不当な経済上の利益の提供要請 七 不当な給付内容の変更及びやり直し 八 要求拒否に対する報復措置 九 情報提供に対する報復措置 今回、公正取引委員会は、イトーキの一連の行為は、このうちの「六 不当な経済上の利益の提供要請」に該当するおそれがあると判断しました。 以前より、公正取引委員会は、物流特殊指定上問題があると思われる行為を行っている荷主に関する情報を積極的に収集し、調査を行っているということです。 調査の結果、荷主に違反行為が認められた場合には、違反行為をやめさせるための排除措置命令や、警告・注意等を行っているといいます。
 

コメント

トラックの運転手不足が社会問題となっている中、物流業界における労働環境の改善が急務となっています。 物流事業者側が運転手らの適切な労務管理を行うことはもちろん重要ですが、取引先となる“荷主側”にも適切な取引を行う意識が必要になります。 今回、イトーキは、時間外費の支払い対象を「納品場所での業務に要した時間」に限定することで、納品場所以外での業務に対する時間外費の支払いを免れていたとされています。 多くの企業が“荷主”として物流事業者と取引する立場にあります。今一度、「物流特殊指定」の内容を確認し、自社の取引がこれに違反していないか、精査してみてはいかがでしょうか。
 
【参考】 特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法(公正取引委員会)
 

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