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三井住友海上とあいおい損保が合併へ、M&Aの手法について

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はじめに

 三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険が合併する方針を決めていたことがわかりました。実現した場合、国内損保の事業規模で首位となるとのことです。今回は合併等のM&Aの手法について見直していきます。
 

事案の概要

 報道などによりますと、損害保険業界3位の三井住友海上火災保険と、4位のあいおいニッセイ同和損害保険、およびその両社が傘下に入っているMS&ADインシュランスグループホールディングスが28日、それぞれ取締役会を開き、両社を合併させる方針を固めたとされます。人口減などで国内市場は縮小が見込まれており、合併による効率化で収益性を高め、より強固な事業体制を構築するとのことです。両社は2010年に持株会社を媒体として三井住友海上とあいおい損保、ニッセイ同和損保が経営統合し、さらにあいおい損保とニッセイ同和損保が合併したという経歴があります。今回の合併が実現した場合、業界首位の東京海上日動や損害保険ジャパンを抑え首位に躍り出る見通しとされております。
 

合併

 複数の会社が統合(M&A)するとしても、その手法、スキームは多種多様です。それぞれに必用な手続きやコスト、かかる期間は様々で、またメリット・デメリットがあります。そのような様々なM&Aの手法の中でまず挙げられるのが合併です。合併は複数の会社が1つとなり、権利・義務、プラスの財産、マイナスの財産が包括的に引き継がれる組織再編行為です。会社法上、合併は吸収合併と新設合併があります。吸収合併は吸収合併存続会社が吸収合併消滅会社を文字通り吸収し、権利義務、人材、知的財産などをそのまま承継します。一方新設合併は複数の会社が合体して消滅し、新たな会社に生まれ変わるといった手法です。権利義務や人材等が新設会社に引き継がれる点は吸収合併と同様ですが、あくまで新しくできた会社であるため、主務官庁からの許認可や株式市場での上場がやり直しとなるなどデメリットが指摘されております。いずれも会社法上の組織再編行為であることから株主総会の特別決議や債権者異議手続きなどが必用となります。
 

株式交換・株式移転

 近年組織再編の手法としてよく利用されているのが株式交換です。これは一方の会社が他方の会社の完全親会社となるための手法で、子会社となる会社の株式を全て強制的に親会社となる会社が取得します。子会社側の株主にはその対価として親会社となる会社の株式が交付されることとなります。対価は自社株で良いので多額の現金を用意する必用がなく、また会社債権者から見ても基本的に株主の構成が変わるだけであることから原則として債権者異議手続きを要しません。これに対し株式移転とは、株式交換と同様に完全親子会社関係を創設する組織再編行為ですが、親会社となるのは既存の会社ではなく新設する会社です。これは複数の会社を子会社化し持株会社(ホールディングス)としてグループ化する際に用いられます。
 

その他のM&A手法

 上記以外にもM&Aに使用される手法は多岐にわたり、会社分割や事業譲渡、TOBやMBOなどが挙げられます。会社分割も合併と同様に吸収分割と新設分割に分けられます。吸収分割は、分割会社の事業を権利・義務含め包括的に承継会社に移転する手法です。これに対し新設分割は分割会社の事業を切り離し、新たな会社を新設して承継させるといった手法です。いずれも組織再編行為であることから株主総会による承認が必用で、また債権者異議手続きを要します。これに対し事業譲渡は、会社の事業の全部または一部を他者に譲渡するというものです。こちらは会社分割と同様に株主総会による承認が必用ですが、組織再編行為ではないことから債権者異議手続きも不要です。しかし会社分割と違って権利義務が包括的に移転するといったものではないことから、債権や債務、また資産や知的財産など個別に移転させるといった手間が生じます。そして会社の支配権を取得することを目的として広く株主から株式の譲渡を募るTOBや、会社経営陣が自社を買収するMBOなどもM&Aの一種と言えます。
 

コメント

 本件で三井住友海上火災とあいおいニッセイは2027年4月を目処に合併する方針です。新社名や合併方式については今後詰めていくとのことです。両社はMS&AD傘下で合併等を経て現在の企業形態となっており、今回の合併では、片方が他方を吸収する形となるのではないかと考えられます。今後合併後の経営体制や商号などが検討され、株主総会での説明や承認手続きに進んでいく見通しです。以上のように経営統合やグループ化、また完全子会社化には様々な手法が用意されております。それぞれに必用な手続きやコスト、期間が異なってきます。それぞれのメリット・デメリット等を把握しつつ、柔軟にM&Aを検討できるよう準備しておくことが重要と言えるでしょう。
 

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