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公取委がエアビー社に立入検査、排他条件付取引について

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はじめに

民泊仲介サイトAirbnb(エアビーアンドビー)が民泊代行業者に対し、他社のサイトを利用しないよう求めていた疑いがあるとして、公正取引委員会は17日までに同社の日本法人(新宿)を立入検査していたことがわかりました。エアビー社側は否定している模様です。今回は独禁法上の排他条件付取引について見ていきます。

事案の概要

報道などによりますと、エアビー社は民泊物件のサイト掲載を依頼してきた代行業者に対し、他社のサイトに掲載しないことを条件として求めていた疑いがあるとのことです。エアビー社は米国最大手の民泊仲介サイトで、2014年に日本に進出、年間利用者は500万人を超え、登録部屋数は5万室以上とされております。民泊に参入しようとする部屋の持ち主は、運営を代行業者に依頼することがありますが、代行業者は民泊仲介サイトへの掲載を通じて利用客を募ります。その際エアビー社は他の競合他社のサイトを利用しないことを求め、その旨の契約書にサインをさせることもあったとのこと。これを受け公取委は独禁法が規制する排他条件付取引にあたる疑いがあるとして立入検査に踏み切りました。

排他条件付取引とは

独禁法は不当な取引制限、私的独占(3条)、企業結合規制(4章)などとともに不公正な取引方法を禁止しております(19条)。排他条件付取引はその一つで「不当に、相手方と競争者が取引しないことを条件として当該相手方と取引し、競争者の取引の機会を減少させるおそれがある」場合に該当することになります(一般指定11項)。違反した場合は排除措置命令が出される場合があり(20条)、違反行為によって利益の侵害を受け、または受けるおそれがある者は差止請求ができ(24条)、損害賠償請求を行うことができます(25条)。この場合、違反した事業者は故意または過失が無かったことを立証しても責任を免れないことになります(無過失責任)。なお排他条件付取引の場合は今現在課徴金は課されておりません(20条の2以下参照)。

成立要件

(1)行為要件
排他条件付取引の成立要件としてはまず、競争事業者と取引しないことを「条件として」相手方と取引を行うことが挙げられます。明示的に契約として行うだけでなく、黙示的、暗黙的な合意でも成立します。そしてその結果、競争事業者の「取引の機会を減少させるおそれ」がある必要があります。これは実際に減少したことは要せず、その可能性があるだけで足りると言われております。

(2)効果要件
そして上記行為要件を満たすことによって公正競争阻害性が認められることが必要です。公取委の流通・取引慣行ガイドラインによりますと、「市場における有力な事業者」がこのような行為を行うことによって、「新規参入者や既存の競争者にとって、代替的な取引先を容易に確保することができなくなる」場合に市場閉鎖効果が生じ、公正な競争を阻害することになるとしています。ここに言う「市場における有力な事業者」とは、基本的には需要者から見た代替性の観点から判断され、シェアが20%を超えることが一応の目安となるとしています。

違反とならない場合

一方公取委のガイドラインによれば、メーカーが部品メーカーに対し、他社に部品の供給をしないよう条件を付けていたとしても、例えばその部品の原材料をメーカーが供給していた場合や、メーカーが提供した技術やノウハウによって製造されている場合は違法とはならないとしています。このような場合は独禁法上も正当な理由として適法となるということです。

コメント

本件でエアビーのサイトに掲載するための条件として、他の民泊仲介サイトと取引しないことが求められていたことが事実であった場合には他の競争事業者である仲介サイト業者の取引の機会を減少させるおそれが認められる可能性はあると言えます。しかし同種の事例として証券会社が証券仲介業者に対し、他の証券会社と取引しない旨を契約書に規定していた事例で公取委は、証券仲介業制度が創設されて間がないこと、証券業界での環境が過渡的であることから、かならずしも競争事業者が取引先を見つけにくい状況となるとは言えないとして否定した例があります。民泊に関しても住宅宿泊事業法(民泊新法)はまだ施行されておらず、民泊仲介事業も過渡的と言えることから否定に傾く可能性もあります。しかしエアビー社のシェアの大きさや利用客の多さから市場への影響は強いと言えるでしょう。排他条件付取引は他社が自社よりも安く提示してきたときは、必ず自社に連絡し、その場合はその他社よりも安く提供するといった取引の場合でも該当し得るとされております。材料メーカーや小売事業者との取引では他社との取引を制限していないかに十分注意を払うことが重要と言えるでしょう。


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