はじめに
NHKは今年の10月4日に、2013年7月にNHKの女性記者が過労死で亡くなった事実を公表しました。確認できる1984年以降、NHK職員が長時間労働による死亡で労災認定されたのは初めてで、NHKでは記者の過労死をきっかけとして、組織全体の働き方改革を進めているようです。
NHK職員が過労死、長時間労働は改善するのか(週刊東洋経済)
今回は過労死と防止対策についてまとめたいと思います。
過労死の現状
年間総実労働時間は緩やかながらも減少していると言われています。しかし、それはパート労働者の増加によるもので、フルタイム労働者の年間総実労働時間は、この20年間まったく減少していません。
そして、下記のリンク先を見ればわかるように、残業時間が長いほど、疲労の蓄積度が高く、過労死等の危険性が高まることは明らかです。
データでみる長時間労働と、「過労死ゼロ」にむけて|連合ダイジェスト
働き過ぎで死亡するケースには「過労死」と「過労自殺」の2つがありますが、いずれも長時間労働による過労が原因です。
働き過ぎが原因として労災請求された件数と支給決定された件数は、平成27年度では、脳血管疾患又は虚血性心疾患等が795件請求され、251件支給決定されました。そのうち96件が死亡しています。精神障害については1515件請求され、472件支給決定されましたが、そのうち93件が自殺をしています。
平成28年度版過労死等防止対策白書 第1章 過労死等の現状 第1節 過労死等の現状
過労死等防止対策推進法
そんな中、政府は、過労死等の実態を明らかにし、国民や企業の理解と関心を深め、過労死を効果的に防止していくことを目的として、平成26年6月に「過労死等防止対策推進法」を成立させ、同年11月より施行しました。
過労死等防止対策推進法の概要|厚生労働省
過労死等防止対策推進法の条文|厚生労働省
過労死等の防止のための具体的施策
では、具体的に企業とすればどのような対策をするべきでしょうか。
考えられる方法としては、勤務間インターバル規制というものがあります。勤務間インターバル規制とは、時間外労働などを含む1日の最終的な勤務終了時から翌日の始業時までに、一定時間のインターバルを保障することにより従業員の休息時間を確保しようとする制度です。既にEUでは導入されており、ワークライフバランスの具体策として期待されています。
勤務間インターバル規制とは?|日本の人事部
どう防ぐ?過労死・過労自殺(くらし☆解説)|NHK解説委員室
過労死等防止対策に関する厚生労働省のウェブページを載せておきます。
過労死等防止対策|厚生労働省
おわりに
大企業での過労死等が相次いで明るみに出て、法律で規制を強化するべきだという声が大きくなってきています。
法務部としても、残業時間が異常に長くなっていないかをチェックしつつ、来るべき規制に向けて、社内においてもワークライフバランスを保てるような制度を整えていく意識が大切です。その際に、先に挙げた「勤務間インターバル規制」などを参考にしつつ、残業時間をどうすれば減らせるかを考えていく必要があるでしょう。