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企業法務における法科大学院生修了生の活用

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1. 法科大学院生とは

新しい法曹養成制度の改革により、原則として法科大学院の修了が司法試験を受けるための要件となりました。平成28年の法科大学院の入学者は1857人であり、各大学の法科大学院の入学者数は東京大学では217人、京都大学では155人一橋大学では88人、早稲田大学では129人、慶応大学では166人、中央大では192人です。法科大学院を修了した者は終了後5年間、司法試験を受験することが可能となります。

2.法科大院修了者の進路

法科大学院修了者は全てが弁護士となれるわけではありません。平成26年司法試験は受験者数が8015人で合格者数が1810人であり、平成27年司法試験は受験者数が8016人で合格者数が1850人です。平成28年司法試験は受験者数が6899人であり、短答試験合格者数は4621人です。この人数からさらに論文試験の結果により最終的な司法試験合格者の人数が絞られることになります。司法試験に合格することができなかった者の進路は、次回の司法試験に受験するために勉強を継続する者、司法試験の受験をやめて就職する者、また、企業に就職しながら司法試験の勉強を継続する者と多岐にわたります。例えば、横浜国立大学法科大学院では209人の修了生について修了後の状況について把握しています。司法試験合格者数は130人です。一方、未合格者は79人であり一般企業に17人、裁判所職員に10人、社会福祉法人に11人が就職しています。

3.企業から見た法科大学院修了生

企業から法科大学院修了生をみた場合、年齢が高いわりに職歴がないため採用することに積極的になることができないということがあります。平成26年司法試験合格者の平均年齢は28.2歳、平成27年司法試験合格者の平均年齢は29,1歳、平成28年司法試験の短答試験合格者の平均年齢合格者の平均年齢は32,1歳であり、司法試験受験者の年齢の高さがうかがわれます。法科大学院修了生を採用する場合、中途採用となることが多いため職歴経験がない人を採用することは難しい判断となります。また、企業によっては法務担当者を置く必要がなかったり、法務専任者が不要であったり、顧問弁護士がいるため法曹資格を有しない法科大学院修了生を採用しないということもあります。一方、学部を卒業した者を採用する場合、22歳・23歳の人材を採用することができ、企業で十分なビジネス経験を積ませながら企業に必要な人材とすることができます。ただし、法科大学院修了性の法的知識や論理的思考力を評価して、法務部門の充実・強化や法律知識に基づく経営判断への助言を求めて法科大学院修了生を採用する企業もあります。

4.コメント

法曹養成制度の改革の目的は、法科大学院を中核としたプロセスとしての法曹養育制度により質・量ともに豊かな法曹を育成することにより国・地方団体・福祉・企業等各分野の法的需要に対応することににより法曹ないし法曹有資格者が社会の様々な分野において活躍できる状況を目指すことにあります。そして、このような目的を達成するためには法科大学院を修了した非有資格者にも社会において活躍することが望まれます。そのためには、司法試験に傾斜した法科大院制度の見直しが必要となります。例えば、各法科大院によるインターンシップ等の制度を積極的に利用できる機会の増加や法科大学のカリキュラムに企業法務等ビジネスにおいて必要とされる知識を組み込むこと等が挙げられます。


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