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東日本大震災復旧談合、11社に課徴金納付命令へ

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はじめに

公正取引委員会は13日、震災による高速道路の復旧工事を巡る談合事件で独占禁止法(独禁法)違反に問われていたNIPPO、前田道路など11社に対し課徴金として約14億円の納付命令を出す方針を示しました。今回は独禁法が禁止する入札談合について見ていきたいと思います。

事件の概要

東日本大震災で被災した福島県、宮城県、岩手県の高速道路の復旧工事で平成23年8月から9月にかけて東日本高速道路(NEXCO東日本)東北支社が発注した12件につき、NIPPO、前田道路、日本道路、大成ロテック、大林道路、東亜道路工業、北川ヒューテック、世紀東急工業等の11社が入札談合を繰り返していたとして起訴されていました。道路工事業者20社は上位業者12社と下位業者8社に分かれて談合グループを作り、最大手NIPPO、日本道路、前田道路の3社が幹事として取り仕切り、世紀東急工業が連絡役として各社に工事を分配していました。談合の疑いのある12件の工事の落札総額は約176億円でそのうち約162億円は復興予算から補助金が投じられておりました。本件で世紀東急工業は入札談合が行われていたことにつき公取委に最初に自主申告したため起訴は免れており、受注したその他の10社が起訴されておりました。

入札談合とは

国や公共団体が民間業者に発注する際は、会計法や地方自治法により競争入札によることが原則となっております。入札に際して予め競争業者間で受注者を決め、できるだけ予定価格に近い額で落札できるようにする行為を入札談合と言います。独禁法2条6項が定義し3条が禁止する不当な取引制限の類型の一つと言えます。違反した場合には公取委により排除措置命令(7条)、課徴金納付命令(7条の2)を受ける場合があります。

入札談合の要件

不当な取引制限の要件は①事業者が他の事業者と共同して②事業活動を相互に拘束し③一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなります。「一定の取引分野」とはいわゆる市場のことであり一般に需要者から見た代替性の観点から画定されます。消費者から見て一方が値上げすれば他方に行くといった競争関係が成り立つ範囲のことを言います。「競争を実質的に制限する」とは競争を減少させ、価格、品質、数量等をある程度自由に左右することによって市場を支配することを言います。「相互に拘束」とは業者間で意思の連絡を行い互いの行動を調整しあうことを言います。これ以上価格を下げない、これ以上供給量を増やさないといったことを互いに取り決めることが該当します。以上が一般的な不当な取引制限の成立要件ですが、入札談合に関しては①基本合意と②個別調整行為があれば上記不当な取引制限の要件を満たすことになると言われております。基本合意とは業者間で話し合ってだれが落札するかを振り分けることを言い、個別調整行為をは落札予定業者が落札できるよう、他の業者が協力してその業者より高く入札したりする行為を言います。

コメント

本件で談合グループの幹事となっていたNIPPO、前田道路、日本道路はそれぞれ協議し、NEXCO東日本が発注する12件の配分案を決定していました。これは基本合意に該当します。それに基づき他の業者は配分を受けた業者が落札出来るよう予定価格ぎりぎりで若干高い価格で入札を行います。これが個別調整行為です。予定価格に対する落札額の比率を落札率といいますが、震災前は平均77%だったのに対し、本件12件では約95%という数値となっております。前者では正常な競争が働き、一番低い価格で入札した業者が落札したことがうかがえますが、後者では入札業者間で競争が行われておらず、互いに協力し合っていることがわかります。談合は業者間で秘密裏に行われることから捜査・立証は困難だと言われております。それゆえに事前通報制度が設けられており、当事者の自発的な申告を促し談合の早期発見と防止を図っております。しかし一般的に入札談合が行われた場合、正常な競争が行われた場合に比して落札率が極めて高い数値となります。こういった場合には談合が行われている可能性が高く公取委が嫌疑をかける切っ掛けとなります。談合が発覚した場合には相当高額な課徴金納付命令を受ける可能性があります。自社で談合の疑いが生じた場合は早急に調査し公取委に申告することが重要と言えます。


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