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はじめに
日経新聞電子版は5日、株主総会の招集通知に役員候補の顔写真を掲載する企業がふえている旨報じました。小田急電鉄や東京エレクトロンなど17.5%の企業が掲載したとのことです。今回は株主総会招集手続きを招集通知中心に見ていきます。
株主総会の招集
株主総会は事業年度の終了後一定の時期に招集することが必要です(定時総会、会社法296条1項)。それ以外にも必要に応じて臨時総会を招集することもできます。招集は取締役会または取締役(取締役会非設置会社)の過半数で決定し(296条3項、298条4項、299条)代表取締役が実行します。招集手続は書面投票・電子投票を採用している場合を除いて株主全員の同意で省略できます(300条)。なお手続を行っていなかった等の不備があっても株主全員が出席した場合は手続の瑕疵は治癒され決議も有効となります(最判昭和60年12月20日)。また株主が一人しかいない場合もその人が出席すれば同様とされます(最判昭和46年6月24日)。
招集通知
招集通知は公開会社の場合、開催日の2週間前までに行う必要があります(299条1項)。非公開会社で書面投票・電子投票を採用していない場合は1週間前までとなります。取締役会非設置会社の場合は定款でさらに短縮することも可能です。この2週間前までというのは正確には開催日当日と発信日を除いて14日空ける必要があるということです。そして通知方法は取締役会設置会社または書面投票・電子投票を採用している場合は書面でとなります(299条2項)。つまりそれ以外の場合は口頭や電話、メール等で招集することも可能というわけです。なお書面で通知することが必要な場合でも株主の承諾を条件としてメールで通知することもできます(299条3項)。
招集通知の記載・添付事項
書面または電子メールによる通知が必要な場合は記載事項として①開催日と場所、②株主総会の議題、③書面投票ができる場合はその旨、④電子投票ができる場合はその旨、⑤定款変更、役員選任、報酬、合併などの一定の重要事項が議題の場合はその概要が挙げられます(299条4項、施行規則63条7項)。そして取締役会設置会社では定時総会の招集通知に計算書類と監査報告、会見監査報告を含む事業報告を添付する必要があります(437条)。なお通知から開催までの間に事業報告の修正があった場合にはその通知方法も通知することができます(施行規則133条6項、計算規則161条7項)。
招集手続の瑕疵
招集の手続または決議の方法が法令もしくは定款に違反し、または著しく不公正な場合は株主総会決議取消の訴えの対象となります(831条1項)。提訴期間は決議の日から3ヶ月で株主、取締役、監査役、執行役、清算人または決議を取り消すことでこれらの地位を取り戻せる者が提起できます。また他の株主への通知もれ等、他の株主に関する手続違反も提訴原因となります(最判昭和42年9月28日)。
コメント
近年多くの企業では招集通知に役員の顔写真を掲載したり、書面をカラーにしたりすることによって株主に親しみを持ってもらい経営陣の顔と名前を覚えてもらうといった工夫がなされております。それ以外にも取締役や監査役に対する社内の評価や採点を掲載したり、社外取締役の会社に対する提言などを記載するといった企業も増えております。株主総会は以上のように会社法上かなり詳細な規定を置いており招集手続きは複雑と言えます。招集通知の記載事項や添付書面の規定もあり、法令の要件を満たす通知を作成するだけでもかなりの手間を要します。今一度上記を参考に株主総会の規制を確認しつつ、株主に会社経営と株主総会に興味を持ってもらえる記載の工夫を行うことも重要と言えるでしょう。