はじめに
LIXILグループの機関投資家などが11日、臨時株主総会の招集を求め東京地裁に招集許可の申し立てを行っていたことがわかりました。実現すれば株主が主導して総会を運営することとなります。今回は会社法上の株主の権利と義務について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、LIXILグループの株主である英投資会社マラソン・アセット・マネジメントなどの機関投資家らの株主連合は3月20日に同社に臨時株主総会の招集を請求していました。会社側は5月中下旬頃に開催する予定である旨を3月25日に発表したとのことです。招集請求した3月20日から3週間が経過した現在でも総会の開催日時や議案等の決定はなされておらず裁判所に招集許可申立を行ったとされます。
株主の権利と義務
株式とは会社の社員たる地位が細分化したもので、株主とは会社の実質的な所有者を意味します。それゆえに株主は会社に対して様々な権利を保持しております。株主総会での議決権や剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利などが典型例です(会社法105条)。その反面、株主が会社に対して負っている義務は株主になる際に会社に払い込んだ出資のみとなっております。合名会社や合資会社、組合のように会社が債権者から負った債務を弁済できない場合に株主が負担するといったことはありません。これを間接有限責任と言います。
各種株主の権利
(1)単独株主権
株主の権利のうち1株でも保有していれば行使できるものを単独株主権といいます。単元株式制度を採用している場合は1単元から行使できます。単独株主権として議決権の他に株式発行差止請求権(210条)、新株予約権発行差止請求権(247条)、累積投票請求権(342条1項)、取締役会招集請求権(367条)、設立無効、株式発行無効、組織再編無効等の各種無効の訴え(828条2項各号)、株主総会決議取消の訴え(831条)、定款、株主名簿、計算書類等閲覧権(31条2項、125条2項、318条4項等)、代表訴訟提起権(847条1項)などがあります。このうち代表訴訟提起権は公開会社の場合は6ヶ月の保有期間が必要です。
(2)少数株主権
単独株主権に対し、一定の株式数の保有が必要な株主権を少数株主権と言います。以下株式または議決権の保有割合ごとに株主権を列挙します。
・株主提案権 議決権の1%または300個以上(公開会社は6ヶ月)(303条、305条)
・総会検査役選任請求権 議決権の1%(公開会社は6ヶ月)(306条)
・業務執行検査役選任請求権 議決権の3%(358条)
・会計帳簿閲覧請求権 議決権の3%(433条)
・役員等解任請求権 議決権の3%(公開会社は6ヶ月)(854条)
・株主総会招集請求権 議決権の3%(公開会社は6ヶ月)(297条)
・会社解散請求権 議決権の10%(833条)
株主による総会招集
株主による株主総会招集請求は上記のとおり議決権の3%(公開会社では6ヶ月)保有する必要があります。招集請求はまず取締役に招集の目的と理由を示して行います(297条1項)。取締役への請求後、遅滞なく招集手続きが行われない場合や招集請求の日から8週間以内の日を総会の日とする招集通知が発せられない場合は裁判所の許可を得て株主自ら招集することができます(同4項)。
コメント
本件でマラソン・アセット・マネジメント等による招集請求がなされてから3週間経過した現在、開催日時や場所の決定がなされていないとされております。裁判所による招集許可が出た場合は株主自ら招集を行うこととなります。株主による招集は上場会社の場合は証券会社等を通じて振替機関からの株主通知によって行うこととなります。また株主の招集による株主総会では通常の株主総会と異なり議長も代表取締役等ではなく株主総会によって選任されます。このように株主総会での主導権は会社ではなく招集株主が取ることとなり会社側がコントロールできなくなる可能性が高いと言えます。株主から総会招集請求がなされた場合には会社側にとって必要ないと思われる場合でも放置せずに慎重に対応することが重要と言えるでしょう。