1.はじめに
障害がある方々の雇用率は、平成27年においては民間企業で約45万人とされており、前年より5パーセント増加しました。また、公的機関における雇用率も前年よりも増加しました。
厚生労働省平成27年障害者状況の集計結果
これらのデータからもわかるように、障害ある方々の雇用に関しては、現在では当然のこととなりつつあります。とは言うものの、障害のある方々を雇用していく上で企業はどういった配慮をすべきかは不明確といえます。そこで、今回は、障害のある方々の雇用に深く関連する障害者雇用促進法について見ていきたいと思います。
この法律は、企業がどのような措置を講ずるべきかが規定されており、とても参考になるものといえます。
2.障害者雇用促進法とは
①.障害者雇用促進法の目的
障害者雇用促進法とは、障害等ハンデのある方々の職業安定を図るべく企業に一定の措置を講じるように求めることを目的とした法律です(1条)。
②.障害者雇用促進法の一定の措置の主な内容
企業に課される一定の措置としては、障害ある方々の雇用義務、労働者募集・採用の際の差別的取り扱いの禁止(34条)、
賃金等の待遇や施設の利用について差別的取扱をしてはならない(35条)ことなどがあげられます(以上につき、障害者雇用促進法の条文を見ておくと良いと思います。障害者雇用促進法)
③.合理的配慮
以上の一定の措置のことを「合理的配慮」とよぶことがあります。合理的配慮とは、障害ある方々のために職場等における障壁を無くそうという観点からの配慮のことです(icare 合理的配慮指針について)。
この合理的配慮の具体例は、上述した募集・採用といった際の差別的取り扱いの禁止などです。以下では、募集・採用の場合も含め、合理的配慮の具体例を紹介します。
ア. 視覚障害のある方々に対して
・採用試験の際に音声ソフトを用いることや、点字を用いた試験問題を配布する。
・筆記試験を行わず、面接による採用試験を行い採用を決定する。
・就業の際には音声ソフトを用いたPC等を用いる。
・書類を読む際にルーペを使用させ、付箋やファイル等に用いる色を見やすく分かりやす
いものに変えた。
イ. 聴覚障害のある方々に対して
・採用面接においては、手話、筆談を用いる。
・個別面接を採用している。
・災害や事故といった危険の発生の場合、音声放送ではなく視覚で判断できるようにして
おく。具体的には、ポスターやシールといった目印をつけておくなど。
ウ. 知的障害のある方々に対して
・面接時には就労支援機関の職員を同席を認める。
・本人の習熟度によって仕事内容を少しずつ増やしていく。
・必要に応じて他の労働者に対して、必要な配慮を行う事を知らせる。
エ. 精神障害(うつ病やてんかん等)のある方々に対して
・面接時には就労支援機関の職員の同席を認める。
・緊張状態が続く場合には、本人が落ち着くまで面接を中断し、回復後また始めた。
・休憩はできるだけ静かな場所で行うように配慮した。
・体調変化等に対応すべく社外でのサポート体制も構築した。
以上の具体例は以下の厚生労働省のホームページの下部「事例集」(PDF)に記載してありますので、そちらもご覧下さい。
厚生労働省 改正障害者雇用促進法施行について
3.最後に
企業としては、障害ある方々を雇用するにあたり、ケアの点やサポートの点でコスト面で不安があると思います。
しかし、上で見た対応策は、低コストで行えるものもありました。企業としても少しの心遣いや配慮でそれらの不安を取り除けるのであれば、就労意欲が高く、企業にとって即戦力となる人材を獲得できるものといえます。