1.コンプライアンスとは
直訳すると、「法令遵守」となる。
2000年代から、法令違反による信頼の失墜や、それを原因として法律の厳罰化や規制の強化が事業の存続に大きな影響を与えた事例が繰り返されているため、特に企業活動における法令違反を防ぐという観点からよく使われるようになった。さらに、企業の、単に法律や条例を守る姿勢だけでなく、その背景にある法の精神や社会良識といった「社会規範全般」、さらには社内規則や業務マニュアルなども含めた幅広い規則を遵守していく姿勢を表していると考えるべきである。
2.関連法規
(1)会社法では以下に規定がある。
①取締役ないし執行役の義務としての規定 330条(善管注意義務)、355条(忠実義務)
②監査役の同様の義務 330条
③取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の「業務の適正を確保するために必要なものとして 務省令で定める体制」の整備 348条3項4号、362条4項6号
「業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制」とは、具体的な内容は法務省令(会社法施行規則)に委任されている。従業員一同にも法令定款遵守を徹底させなければならないとされている。
【会社法施行規則100条】
(委員会設置会社では若干内容が異なる)
④特に大会社については、内部統制システム構築義務が課されている
【348条4項、362条5項】
(2)【その他、取り組むべべき法令、社内規則、倫理として考えられるもの】
3 コンプライアンス違反の効果
①違反企業は、損害賠償賠償などの法的責任を負うこともある。
②取締役は株主代表訴訟で法的責任を問われることもある。
③信用失墜により売上低下などの社会的責任を負うことになる。
④行政からの罰則・処分
法令違反に対する行政の対応は、近年着実に厳しくなっている。
行政側が処罰を厳しくしている背景には、企業内のコンプライアンス体制の整備を後押ししていこうという狙いがある。
4 違反事例
【参考資料:近年のコンプライアンス違反事例】
③【タカタ エアバッグ不具合 2015年】
④【みずほ銀行暴力団融資事件 反社会勢力取引 2013年】
⑤【大塚家具内紛 コンプライアンス経営の倫理観を問われうる事例 2015】
5 一般的なコンプライアンス体制に求められる要素
コンプライアンス体制の整備にあたっては、以下の要素を基本に考えていくのが一般的である
(1)コンプライアンス体制構築
① 体制の1例
(2)行動基準作成
*倫理方針、行動規範集、内部規程などの文書作成
*まずは、経営者の意識改革が大事
内部統制構築の事前準備での課題は、第一に「経営者(トップ)の意識改革」と言える。 経営者が内部統制の重要性を理解していないまま構築を進めても、構築過程において発生する数々の難題を打開する事はできないからである。
内部統制構築において、経営者の指導力は不可欠と言える。
(3)リスク評価と対策立案
*事業ごと、職場ごとにリスクを洗い出し、対策を立てる
*中長期的な計画と予算が必要
財務報告に係る内部統制の評価を客観的に行うためには、業務を全て洗い出し、同じ業務を誰が行っても同じ結果が得られるように標準化する。 それを、規程やマニュアル、手順書といった文書の作成などによって、可視化をする必要がある。 この文書化という作業までには、非常に大きな工数を要し、資金も必要とさる。そのため、内部統制の導入、整備、運用までは、中長期的な計画と予算が必要となる。
(4)教育の実施 全役職員が自社のコンプライアンス方針を理解する
(5)文書管理 関連文書を利用しやすい状態で保管し、活用する
(6)モニタリング・監査 内部通報システムなどの定期的なチェック
6 コンプライアンス担当の役割の重要性
コンプライアンス推進の責任者であるコンプライアンス担当は、以下のような役割を果たすことになる。
・倫理方針、行動規範集、内部規程などの文書作成・改訂の統括をする
・リスクの洗い出し、対策立案などコンプライアンス実施計画全般の遂行を統括する
・各種法令を把握し、役職員が必要に応じてアクセスできる状態を維持する
・コンプライアンス教育の実施
・コンプライアンスに関する報告相談業務
・各部門との調整・連絡
7 コンプライアンス教育・監査のポイント
(1)「コンプライアンス啓蒙活動」
構築したコンプライアンス体制を実際に機能させていく上で重要になるのが、経営陣から従業員(アルバイト、パート、派遣スタッフなども含む)までの全役職員に対
する教育である。
(2)モニタリング、監査の役割が大切。
コンプライアンス体制を構築した後、そのシステムが期待したような機能を果たしているかどうかを定期的にチェックが不可欠。
*PDCAサイクルの導入が効果的
内部統制の関わるあらゆるマネジメントでは、PDCAサイクルに基づいた流れに基づき、推進される必要がある。
PDCAサイクルとは、製造業などの事業活動において、生産管理・品質管理などの管理マネジメントを計画通りに推進するためのマネジメントサイクルの1つ。
・PLAN(計画):従来の実績や将来の予測などをもとにして業務計画を作成する
・DO(実行):計画に沿って業務を実施する
・CHECK(評価):業務の実施が計画に沿っているかどうかを確認する
・ACTION(改善):実施が計画に沿っていない部分を調べて処置をする
このサイクルに基づき、経営者自らが陣頭にたって内部統制の導入を計画(PLAN)し、・整備・運用(DO)する。
そして、内部統制の有効性を評価(CHECK)することによって、重大な欠陥や問題点がある場合は、早期に是正(ACTION)しなければならない。
内部統制を取り巻く環境は、企業の内外で変化していますので、サイクルを回すことによって改善を続ける必要がある。
このように、継続的な改善を図ることによって、より完成度の高い形へと構築していくことが大切。
8 コンプライアンス導入の注意点
ある程度の歴史のある企業、業界の場合、コンプライアンス違反を生みかねないような慣習が当然のことになっていて、なかなか自分たちでは気づかないというケース
もある。また、中堅・中小企業などでは、コンプライアンスに関するノウハウを一から学ぶ余裕がない、人材がいないという場合も考えられる。そういった場合に活用し
たいのが、外部の専門家、専門企業だ