はじめに
プレリリース配信大手のPR TIMESは9日に、2021年5月から7月にかけて不正アクセスを受けた結果、上場企業の公表前の情報などが含まれた画像・文書ファイルが流出したと発表しました。
流出したのはPR TIMESの会員企業13社のプレリリース230件に掲載される画像を含むファイル230点及びこの13社中4社のプレリリース28件の文書ファイル28点です。なお、上場企業の情報も流出したものの、投資判断に影響が出るような内容の漏洩は現時点では確認できていないと発表しています。
事案の概要
発表前の情報がSNSに投稿されているという指摘を7月5日に会員企業から受けてPR TIMESが調査を始めました。ZIPファイルのダウンロード機能に問題があることが6日にわかり、過去のダウンロード用URLを基にURLの文字列を推測することで公開前の画像ZIPファイルが入手できる状態であり13社に不正にアクセスされていたことがわかったとしています。8日には、公開前のPDFファイルもダウンロードできる状態だったことが判明しました。
プレリリースとは
プレリリースとは、新聞やマスコミなどの報道機関に対して企業としての新しい情報を発表することを意味し、文書そのものをプレリリースとすることが多いです。プレリリースには大前提として新規情報が含まれています。
企業がプレリリースを利用するメリットとしては、自社の活動をメディアに取り上げてもらい、第三者の報道を通じてその活動の認知を広められることが挙げられます。もっとも、近年ではプレリリース配信サービスを活用し、自社のSNSでプレリリースを公開したりする企業も増え、企業から消費者へ直接プレリリースすることが多々あります。
プレリリースと法務
企業はプレリリース情報の内容は決められても、それを見た報道機関の報道内容に関しては企業側からリクエストを出すことはできません。プレリリースの内容がメディアを通して世の中にどのように伝えられていくのかコントロールするために、自社目線と報道目線を使い分けてプレリリース情報を提供する必要があります。
そのため、プレリリースに関する契約内容の内、どのようなプレリリース情報を提供するかその具体的な内容が肝となります。また、今回のような情報漏洩が起きた場合の損害賠償責任だけでなく、インサイダー取引に関する規制等、プレリリースは通常の取引よりも多岐にわたる法適用があり得ます。
コメント
情報化社会になり利便性が高まったものの、本件のような不都合な事案も生じるのは致し方ないことだと思います。PR TIMESは今後さらにセキュリティを強化する予定だと説明していますが、プレリリース等は公開前の情報を秘匿することが契約の重要な要素となることは明らかであり、同社に対する信用の低下は避けられないでしょう。
企業法務従事者としては、プレリリース戦略を自社主導のものにしアウトソーシングに頼らない選択肢を再考してもよいのではないかと思われます。また、アウトソーシングするとしても情報漏洩等の非常事態に備えた条項が契約上設けられているか、再度チェックするいい機会だと思われます。