はじめに
ホビー誌を発行するホビージャパン社は、SNS上で転売行為や買い占め行為を容認するような発言をした同社の編集者を退職処分にし、その管理監督者の常務取締役編集制作局長を取締役に降格し、同誌の編集長を副編集長に降格、同誌の副編集長をデスクに降格することを26日にツイッター上で発表しました。
事案の概要
ホビージャパン社はホビー誌『月刊ホビージャパン』などを発行する企業であり、転売容認するかのような発言をした編集者は、SNS上で実名を伏せていたものの「月刊ホビージャパンの編集」と明記し、所属企業及び業務を明らかにしていました。このツイートがSNS上で炎上したことにより、ホビージャパン社が処分を行ったという経緯があります。
同社はツイッターにて「この度SNS等におきまして、当社編集者が昨今のホビー商品についての一方的な見解を述べ、皆様のホビーに対する想いや、当社に対する信頼を裏切る事態になってしまっておりますこと、お詫び申し上げます」と24日にお詫びしております。
懲戒処分とは
懲戒処分とは、社内規定等に違反し企業秩序を乱した労働者に対し、使用者が制裁として行う不利益措置のことをいいます。
懲戒処分は軽い順に
①戒告・訓戒・譴責
②減給
③出勤停止・停職・懲戒休職
④降格・降職
⑤論旨解雇・論旨退職
⑥懲戒解雇
となります。
懲役処分を行うには「使用者が労働者を懲戒することができる場合」(労契法15条)にあたることが必要であり、「あらかじめ就業規則において懲戒の種別および事由を定めておくことが必要」です(最判二小 平15・10・10)。
また、懲戒処分が有効であるには「客観的に合理的な理由」(労契法15条)が必要であり、社員の不正行為を証明する証拠の存否を慎重に検討する必要があります。
さらに、処分の内容が、企業が被った不利益と比較して「社会通念上相当」(労契法15条)であることが、懲戒処分が有効となるのに必要となります。社会通念上相当かどうかは、損害の程度や労働者の反省の態度、過去の処分歴等を総合考慮して判断されます。
本件の懲戒処分について
退職処分は最も重い処分であり、本件の懲戒処分は社会通念上相当な処分であるのか問題となりえます。問題となる発言をした社員が過去に懲戒処分を受けていたのか、反省の色は見えないのか等、外部からは窺い知れぬ事情が多いため、一概にその是非を判断しかねる問題ではありますが、企業としては、企業に与える負のイメージが大きいことを勘案して重めの処分をしたものと考えられます。
コメント
SNS上で炎上してから懲戒処分の発表まで短期間であることから、ホビージャパン社は早急な対応をしたと評価できます。企業にとってイメージは重要なものですので、いち早く火消しをしてリカバリーに努めることが重要となります。
企業法務従事者としては、予防策として社員のSNSで企業名を出すなら「所属組織の見解とは関係ありません」の一文を書いてもらうか、そもそも企業名を出すのを控えるよう促すとよいでしょう。事後策としては、早急・適切な処分をし、イメージ回復に努めるとよいでしょう。