はじめに
厚生労働省の脳心疾患の労災認定の基準に関する専門検討委員会は、現行の労働時間の負荷要因に加え、労働時間以外での負荷要因で一定の負荷が認められる場合には、総合考慮の上で労災認定の判断をすること等を16日に報告書で示しました。
事案の概要
業務による過重負荷を原因とする脳心臓疾患については、労働者災害補償保険制度(以下「労災保険制度」という。)の下、平成13年12月に改正した「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準」に基づき労災認定を行ってきましたが、認定基準の改正から約20年が経過する中で、働き方の 多様化や職場環境の変化が生じていることから、最新の医学的知見を踏まえた検証を行う必要があります。
このため、本検討会において、最新の医学的知見に基づき、医学、疫学、予防医学、労働衛生学及び法律学等の専門的見地から認定基準について検討が行われました。
労災認定の要件
労災認定されるには、「業務遂行性」と「業務起因性」という要件を満たす必要があります。
業務遂行性とは、業務中の外傷や疾病なのかを判断する要件となります。例えば、工場で作業している社員が機械に手を挟み怪我をした場合等がこれに当たります。
業務起因性とは、業務と外傷・疾病とで因果性が認められるかを判断する要件となります。例えば、長時間労働をしたことにより心臓を悪く死亡した場合等がこれにあたります。
労災認定基準の具体的内容
現行の労災認定基準である、業務による「長期間にわたる疲労の蓄積」と「発症に近接した時期の急性の負荷」が発症に影響を及ぼし業務起因性を認めるとする考え方は、検討会において妥当であると解されています。
本検討会において焦点があてられたのは、上記基準に加えて、勤務間インターバルが短い等の労働時間以外の負荷要因を過重労働の評価対象として取り入れて業務との因果性を認めうるようにするという点にあります。
これによって、現行の基準では労災認定されない場合であっても、時間内労働と時間外労働とを総合考慮して労災認定がなされる場合が生じ得るようになります。
コメント
社会の変容と共に法令も変化します。脳心疾患の労災認定の基準は約20年もの間改正されていませんが、労働環境の変化がめまぐるしい昨今の現状を受け、今後は法令の改正が度重なる可能性があります。
企業法務従事者としては、労災認定の基準等を熟知した上で、労働者の業務内容や勤務時間を見直すとよいでしょう。また、労災基準の改正が今後行われるのか、その動向を注視すべきでしょう。