懲戒処分をするには?
懲戒処分が適法とされるためには、懲戒事由に該当する必要性と処分内容の相当性を要する(労契法15条)。
懲戒処分に関して違法性があるかについて、最高裁は、使用者の裁量権による処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断する。
神戸税関事件(最判昭52年12月20日)
懲戒事由に該当するかは、具体的に企業秩序に反するといえるか否かという基準で判断される。
例えば、会社の備品のボールペン一本盗んだだけでは、そもそも懲戒事由にあたらないと判断される場合も。
さらに細かなルールも
・罪刑法定主義
懲戒事由、懲戒内容を予め明示することが必要。就業規則で規定する。
就業規則具体例
使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する。
国労札幌支部事件(最高裁昭和54年10月30日)
ただし、明らかに企業の秩序をみだし、企業の目的遂行に害を及ぼす行為については就業規則等に規定がなくても可能。
北辰精密工業事件(東京地裁昭和26年7月18日)
・不遡及の原則
根拠規定が設けられる以前の事実に対して適用することは許されない。
・平等原則
規律違反の種類・程度その他の事情に照らして、他の同僚や過去の例と比べても平等な扱いであることが求められる。
・一事不再理
同じ行為に対し二重に処罰することはできない。憲法39条の要請。
平和自動車交通事件(東京地裁平成10年2月6日)
・適正手続き
「信義則」上は、処分の事由の告知と弁明の機会の提供が要請されることになる。
ただし、就業規則上、処分理由を告知すべき旨の定めがない場合には、「事実を告げなかったからといって、直ちに懲戒処分の手続に反し、無効であるということはできない」
総友会事件(東京高裁平成4年5月28日)
以上のルールを守らずになされた懲戒処分は無効となる。
懲戒処分の種類
①戒告・譴責②減給③出勤停止・停職④降格⑤諭旨退職⑥懲戒解雇
※減給処分の限度
「就業規則で、減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。」 (労働基準法第91条)
企業外での非行を懲戒できるか?
企業秩序を乱さない限りは懲戒の対象とならない。
もっとも、労働者の企業外での非行によって、使用者の名誉・信用が害される場合には、懲戒を行うことができるとされている。
中国電力事件(最判平成4年3月3日)