はじめに
川越管財(株)(旧:日測エンジニアリング(株))は、2021年8月31日にさいたま地裁川越支部より特別清算開始命令を受けました。
事案の概要
川越管財(株)は、1974年に創業後、環境試験装置の製造業者であり、各種複合環境試験装置の開発・製造・販売等を手掛けていました。2012年には年売上高約10億4500万円を計上していました。その後さらに事業を拡大しましたが、金融機関からの借入金が多額にのぼっていたため、利払いの負担が収益面を圧迫していました。以降、業績は急激に安定性を欠き資金調達も限界となったことで、事業の大半を別会社に譲渡し、2021年5月31日に商号を変更のうえ会社を解散し、特別清算手続きにより多額の負債を処理することとなりました。申請時の負債は約50億円の見込みです。
特別清算制度とは
特別清算は会社法510条以下に規定されている制度であり、株式会社に限り利用できる手続きです。破産手続きと同じく裁判所に申し立てをして行うものですが、破産手続きに比べて簡易な手続きとなっており、費用も少なく済むという特徴があります。具体的には、手続きを利用するために予納金という費用がかかるのですが、その額が特別清算の方が破産よりも安く済みます。また、簡易な手続きたる所以は、特別清算は終了までの期間が短いからです。破産の場合は申し立てから終了まで6か月程度の期間が一般的に必要となりますが、特別清算は早ければ2か月で終了します。
特別清算のデメリット
もっとも、利用できる場合が株式会社に限定されており、債権者の同意が必要となるというデメリットも挙げられます。合同会社や合資会社等はこの制度を利用できません。また、債権者の同意が制度利用の要件となることは最大のデメリットであり、特別清算においては、債権者集会に「出席した議決権者の過半数の同意」かつ「議決権者の議決権の総額の三分の二以上の議決権を有する者の同意」が必要で、この同意を得られない場合には特別清算を利用できないこととなります。
コメント
実情としては、親会社が経営難の子会社に対する債権を買い取り子会社を清算する際に利用されることが多いようです。そのため、日本における破産件数と比べると利用頻度は落ちますが、合理的な清算手法として未だ制度の利用価値があるといえます。企業法務従事者としては、子会社が経営難の場合に上記スキームを利用する等、特別清算をオプションの1つとしてストックしておくことをお勧めします。