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タイガー魔法瓶、転倒してもこぼれないケトルで課徴金588万円

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はじめに

 消費者庁は9日、タイガー魔法瓶がテレビCMなどで、転倒してもこぼれない電気ケトルと宣伝していたとして課徴金588万円の納付命令を出していたことがわかりました。こぼれる場合があったとのことです。今回は景表法の優良誤認表示と課徴金について見直していきます。
 

事案の概要

 消費者庁の発表などによりますと、タイガー魔法瓶は電気ケトル「PCK-A080」のテレビCMなどで、同商品を持ち運んでいる人物がつまづいてソファの上に落として転倒させるものの中身がこぼれない映像とともに、「もしものとき、熱湯がこぼれないように設計しています」との音声を流していたとされます。またそれらの映像でには「安全最優先」「転倒お湯もれ防止」といった文字も表示され、あたかも同商品は転倒してもお湯がこぼれないかのような表示がなされていたとのことです。しかし実際には同製品は構造上お湯がこぼれる場合もあったとして消費者庁は同社に588万円の課徴金納付命令を出しました。
 

景表法上の規制

 景品表示法5条1号によりますと、商品または役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、または事実に相違して同業他社のものよりも著しく優良であると示す表示であって不当に顧客を誘引し、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある表示は不当表示の一種として禁止されております。一般に優良誤認表示とよばれるものです。違反に対しては不当表示の差し止め、再発防止などを命じる措置命令(7条)や課徴金納付命令(8条)が出されることがあります。消費者庁はそれらの行政処分を行うにつき、必要がある場合は報告や帳簿、その他の物件の提出を命じ、また立入検査等を行うことができます(29条1項)。そして措置命令に違反した場合は罰則として2年以下の懲役、300万円以下の罰金、法人に対しては3億円以下の罰金が規定されております(36条、37条)。29条の命令違反に対しても1年以下の懲役、300万円以下の罰金となっております。
 

優良誤認表示の要件

 通常、広告や宣伝にはある程度の誇張が含まれるものと言えます。このような通常程度の誇張は許容されますが、これを超える誇張や誇大な表示は「著しく優良」な表示として違法となります。この通常程度を超えるとは、一般消費者が表示と実際が異なることをあらかじめ知っていたら取引に誘引されることがなかったであろうと認められる程度と言われております。そしてその判断にあたっては、当該商品や役務、サービスの表示に接する消費者を基準として、その表示から受ける印象や認識から判断するとされます。その規制対象はあらゆる商品や役務、サービスが含まれます。またその表示に関しては、故意や過失は問題とならず、一般消費者に優良誤認を与える表示となっているかのみが問題となります(東京高裁平成19年ベイクルーズ事件審決取消判決)。
 

課徴金制度

 上記のように優良誤認表示や有利誤認表示については課徴金納付命令の対象となります。対象期間は3年間を上限とし、対象商品または対象役務の売上額に3%を乗じたものとなります。不当表示であることにつき、善意でかつ相当な注意を怠らなかったと認められる場合には免除されます。また算定額が150万円未満の場合も免除となります。課徴金が命じられる場合には手続きとして当該事業者には弁明の機会が与えられます(13条)。また除斥期間は5年となっており、違反行為を辞めた日から5年が経過したときも免除となります(12条7項)。さらに違反事実を報告した場合には減免制度として50%が免除され(9条)、また所定の手続きに沿って返金措置を講じた場合も減免されます(10条、11条)。
 

コメント

 本件ではタイガー魔法瓶の電気ケトルのCMで、転倒させてしまってもお湯がこぼれないような表現がされ、「安全最優先」「転倒お湯もれ防止」といった表示がなされていたところ、消費者庁と公取委の調査では、実際には構造上お湯がもれる場合もあったとされます。転倒させたり落としてしまってもお湯がもれないと断定的な表現をしたことが一般消費者を誤認させるものと判断されたと考えられます。以上のように広告や宣伝ではある程度の誇張は許容されますが、それを超える場合は違法となります。特に実際には表示と異なると否定しきれない場合に断定的な表現を用いることは危険と言えます。自社製品のウェブ広告やCMでそのような誇張がなされていないか、一般消費者に誤認を招くような表現となっていないかを今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。
 

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