はじめに
アステラス製薬は社会の持続可能性向上や企業価値の持続的向上を図るため、サステナビリティミーティング資料を公表しました。本ミーティング資料では、保健医療へのアクセス向上、気候変動対策、コーポレートガバナンス、人材と組織、マテリアリティ・マトリックス、株式市場の6つの要素で構成されています。今回は、アステラス製薬の公表資料の要点を見ながら、大手製薬会社がどのようにサステナビリティ向上を目指そうとしているのか見ていきましょう。
「サステナビリティミーティング資料」の前提
サステナビリティミーティング資料の冒頭にも記載されているとおり、アステラス製薬が資料に記載している現行の計画や予想、各種戦略などは、アステラス製薬の業績に関する将来の見通しであり、経営陣が確認可能な数値に基づいて算出されたものです。これらの計画や見通しは、主に次のような要素によって大きく変化する可能性があるとされています。
①医薬品市場における事業環境の変化および関係法規制の改正
②為替レートの変動
③新製品発売の遅延
④新製品および既存品の販売活動において期待した成果を得られない可能性
⑤競争力のある新薬を継続的に生み出すことができない可能性
⑥第三者による知的財産の侵害等
保健医療へのアクセス向上
保健医療へのアクセス(ATH: Access to Health)向上に向けて、アステラス製薬では3つのカテゴリーを設定しています。1つ目の「新薬ビジネス」は、アンメットメディカルニーズを満たす革新的な新薬をつくり出し、ジェネリック医薬品のようなより安価な薬の販売へとつなげることを通じ、保健医療へのアクセス向上につなげるものです。また、2つ目である「アステラス製品の入手可能性向上」については、革新的な治療薬に対する患者の入手可能性改善を目指すこととしています。3つ目の「 第三者が実施するATH活動の支援」としては、住血吸虫症治療薬をアフリカの展開に向けて承認申請の準備中であることや、がん教育を目的としたデータベース構築、疾患啓発セッション開催のサポートなどを今後行う予定としています。
気候変動対策
気候変動対策としては、2015年を基準として、2030年までに温室効果ガス排出量を30%削減すること、などが掲げられています。温室効果ガス削減に向けた今後の取り組みとしては、主に国内生産拠点でニーズのある更なる再生可能エネルギー由来電力の導入、 営業車両のハイブリッド車、電気自動車の導入率向上などが記載されています。
コーポレートガバナンス
アステラス製薬では、2018年6月に監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行しています。また、取締役会で議論されるべき4つの重要経営課題として、経営戦略、ステークホルダーエンゲージメント、リスクマネジメント、コーポレートガバナンスを設定しています。
人材・組織
本資料では、イノベーションを生み出す人材・組織を目指して、グローバル機能別組織に対応した人事制度・システムの構築、イノベーティブな組織へと変革するための組織健全性目標の策定、多様な人材が活躍できる環境の整備が掲げられています。特に、イノベーティブな組織づくりへの取り組みとしては、心理的安全性のある組織文化の醸成として、心理的安全性Playbookの作成と研修での活用等の施策がなされています。
コメント
近年では、SDGsなど、環境や医療、エネルギーを含むサステナビリティへの取り組みが社会側から求められるようになっています。今回、アステラス製薬がレポートを公表した中にも、これらの企業が果たすべきサステナビリティへの取り組みが多数記載されています。実際に、アステラス製薬が受けたESGに関する外部評価の内容も公開されています。
【外部リンク】アステラス製薬サステナビリティミーティング 説明会スクリプト