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ファビウス株式会社、健康食品の有利誤認表示をめぐる控訴審で勝訴

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はじめに

消費者庁は2022年3月9日、消費者契約法第39条第1項に基づき、消費者被害防止ネットワーク東海とファビウス株式会社との間で生じた訴訟の控訴審判決について概要、経緯および結果を公表しました。訴訟結果はファビウス株式会社の勝訴となりましたが、背景にはどのような要因があるのでしょうか。今回は、訴訟までの経緯や争点、結果について詳しく解説します。
 

訴訟までの経緯

今回の訴訟は、適格消費者団体の「特定非営利活動法人消費者被害防止ネットワーク東海」(以下「消費者被害防止ネットワーク東海」)が健康食品を販売するファビウス株式会社に対して起こした訴訟です。ファビウスは「すっきりフルーツ青汁」という健康食品を販売しており、今回はこの商品の表示方法が争点となります。本商品は「ラクトクコース」という購入契約であり、4回以上継続して購入することを条件に、初回の値段を定価の84パーセント割引して価格で購入できるというものでした。しかし実際には、1回のみの購入契約であるかのように見せていたこと、1回当たりの平均支払金額よりも初回の支払金額を低額にする合理性がないにもかかわらず初回の支払金額を強調して表示したことから、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」)第5条第2号の有利誤認表示に該当するものとして、消費者被害防止ネットワーク東海が差止めを求めた事案となります。 e-gov|不当景品類及び不当表示防止法
 

名古屋地方裁判所の判決と本事案の争点

本事案に関して、名古屋地方裁判所はファビウスに対して有利誤認表示に当たらないとし、ファビウスが勝訴するかたちとなりました。これに対して消費者被害防止ネットワーク東海は判決を不服とし、名古屋高等裁判所に控訴しました。名古屋高裁においては、「すっきりフルーツ青汁」をラクトクコースで購入する場合、初回の購入金額を低額にする表示が、景品表示法第30条第1項第2号の「有利誤認表示」に該当するかどうかが争点となりました。
 

名古屋高等裁判の結果

2021年9月29日、名古屋高等裁判所は控訴人の控訴を棄却する判決を下しました。理由としては、①常識的な消費者が商品の表示内容を見れば、ラクトクコースでの購入が初回1回だけの契約と誤解することがないと言えること、②常識的な消費者の認識を基準とした場合、「有利誤認表示」に当たるとは認められないことなどが挙げられています。消費者被害防止ネットワーク東海は「被控訴人が消費者庁のガイドラインを熟知しておきながらかたくなに姿勢を崩さず、今後も有利誤認表示をする恐れがある」と主張しましたが、上記の理由により認められませんでした。
 

コメント

今回の事案では、ファビウスの主張が全面的に認められる結果となりました。ファビウスでは自社のホームページ上で訴訟結果を公表し、今後も適切な広告表示に努めると述べています。今回の争点であった「初回の購入金額を低額にする表示」は有利誤認表示とは認められませんでしたが、判決理由からもわかるとおり、企業には常識的な消費者が商品の契約について誤認することのないよう、わかりやすい表示をすることが求められています。企業法務の観点から、消費者庁の「景品表示法関係ガイドライン」等を十分に理解し、適切な景品表示を徹底しましょう。 消費者庁|景品表示法関係ガイドライン等
 

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