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メルコホールディングスが連結子会社社員の不正送金及び横領に係る社内調査結果を公表

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はじめに

2022年4月26日、株式会社メルコホールディングスは連結子会社社員の不正行為に係る社内調査結果を公表しました。同社では2022年1月より外部専門家を交えた内部調査委員会を設置し調査を進めてきており、今回はその調査結果を公表したかたちになります。そこで今回は、不正行為の概要や調査内容、調査結果とその後の同社の対応について見ていきましょう。
 

事件の経緯

メルコホールディングスの連結子会社であるシマダヤ関東株式会社の経理業務担当者は、経理担当であるという地位を利用し、2017年から2021年までの間計274回にわたり、会社の取引口座から自己名義の普通預金口座に不正送金を行っていました。また、同社内の小口現金を着服するなどし、現預金合計約98百万円を横領したことも発覚しています。不正の手口としては、社員が取引銀行のインターネットバンキングに利用するカード型のトークンを単独で不正利用し、自己名義口座へ振込を行った後、自分のキャッシュカードで現金を引き出していたものです。さらに、同社員は発覚を防ぐため、四半期決算毎に帳簿上の預金残高を実際の預金残高に合わせる経費の水増し計上を行ったほか、入出金明細照会表を偽造するなどの悪質な隠ぺい工作も行っていました。これを受け、メルコホールディングスは不正行為に関する事実関係の解明や発生原因の分析、類似した不正行為の有無の調査、および再発防止策の提言を目的として、代表取締役社長を委員長とした内部調査委員会を設置しています。
 

調査内容および調査結果

同社については、同種の不正がないかも含めた調査を行い、その後再発防止策の実施状況に関する調査を行っています。併せて、調査対象範囲を拡大し、2022年3月にはシマダヤ東北株式会社とシマダヤ西日本株式会社への調査も行っています。今回不正が行われた連結会社への調査は、関係者に対するヒアリング及び関係資料等の閲覧や会計データ等の調査・分析、同社員の会社貸与パソコン、会社貸与携帯電話、電子メールデータの保全・確認、本件不正事案を受けて策定した再発防止策に係る実施状況の確認及び検証を行っています。
 

調査結果および再発防止策

同社については、コンプライアンス上の問題点や内部管理の課題は見つかった一方、組織的な関与や共謀の事実は発見されませんでした。このことから、今回の不正は社員個人によるものと考えられます。また、その他の会社への実地調査や役職者へのヒアリングも行いましたが、現預金の残高管理やチェック体制などの内部管理体制に不備は確認できず、新たな不正行為も発見されなかったとのことです。 再発防止策としては、①経理における各業務プロセスにおいて牽制が効くよう支払い業務フローの見直し・強化を進める、②インターネットバンキングは単独の社員が支払い業務を行えないように権限設定の整備・強化を図る、③小口現金、預金通帳、銀行印等などの運用ルールを強化する、④経費明細等実績のチェック体制を強化するとしています。
 

コメント

今回の件を受けて、メルコホールディングスは関与した同社員及び管理監督の立場にある役職員等について厳正に処分するとしています。不正を行った社員に関してはすでに刑事告訴済みであり、会社は引き続き全容究明に向けて捜査当局に全面的に協力する方針を明らかにしています。また、業績に与える影響としては、四半期決算関係についてすでに対応済みであること、新たな不正が見つからなかったことから、今後の影響は少ないとしています。 社内で不正が発生した場合、自社(あるいはグループ会社)の事業や財政、そして風評に甚大なダメージを受ける恐れがあります。そうしたダメージを最小限に留めるためにも、以下の手続きを直ちに実行していく必要があります。 (1)事実確認のための迅速な調査 (2)規制当局から開示を求められる情報の収集と開示 (3)原因の把握と再発予防策の策定・公表 (4)不正防止のための体制構築 有事の際に、どのような手順で上記手続きを進めるかを平時から確認しておくが大切です。
 

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