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株式会社サードウェーブがマカフィー株式会社の不法行為に基づく損害賠償の判決結果を公表

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はじめに

株式会社サードウェーブはセキュリティソフトを販売するマカフィー株式会社を被告として不法行為に基づく損害賠償請求を行っておりましたが、2022年4月22日に東京地方裁判所より判決が出ました。これを受けて、株式会社サードウェーブは、2022年4月25日に文書にて、その結果と今後の対応について説明を行いました。今回は、訴訟までの流れと判決内容について詳しく見ていくことにします。
 

両社の概要

株式会社マカフィーはウイルス対策ソフトウェアを販売するデータ会社であり、アメリカに本社を置いています。一方、株式会社サードウェーブは創業から38年以上経つIT企業であり、商品企画・開発、カスタマーサポートやシステム開発、システムコンサルティングなどを展開しています。パソコン専門店「ドスパラ」の運営やデジタル雑貨ブランド「上海問屋」の運営、ゲーミング PC「GALLERIA」、クリエイター向けPC「raytrek」などの製造・販売も行っており、国内で高い知名度を誇っています。
 

事件の経緯

サードウェーブ社の発表によりますと、同社が社内のパソコンへのマカフィー社のセキュリティソフトの搭載を検討した際、マカフィー社は事実に反する説明を繰り返し行っていたとのことです。これにより、サードウェーブ社は複数年にわたり経営判断に不当な影響を被り、不法行為による損害を被ったとしています。こうした背景から、サードウェーブ社は「セキュリティソフトを販売するマカフィー社が、信義則に反し、不法行為をすることは容認できない」として、2018年10月22日付でマカフィ社を提訴しています。

【参考】 「信義則」とは、民法第1条第2項で触れられている「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」という規定のことです。信義則に反する行為が行われた場合、訴訟の対象になることがあります。

 

判決の内容

今回の訴訟に対して、東京地方裁判所は「原告によるライセンス料の支払は被告の不法行為による損害といえる」とし、マカフィー社に2,347万5,262円の損害賠償を命ずる判決を言い渡しました。また、裁判所は、取引相手が経営判断の前提事実について誤った情報を提供した場合、経営判断に不当な影響を及ぼすことは明らかだと認めており、誤った事実を伝えることは信義則上許容し得ないものと判断できるとしています。さらに、マカフィー社の「企業間のビジネスでは原則として一方当事者は他方当事者に情報提供義務を負わない」とする主張に対しては、「仮に積極的に情報を提供する義務がなかったとしても、誤った情報を提供して経営判断に悪影響を与えることまで許容されるものではない」と判示しました。このような理由から、契約を締結しなければ支払うことがなかったライセンス料につき、不法行為による損害と認定し、マカフィ社に対し当該損害を賠償を命ずる判決が下されました。
 

コメント

株式会社サードウェーブは今回の判決内容について、「判決により、マカフィー社の不法行為に対して、司法の良識ある判断が示された」とコメントしており、今後も信義則に反する行為に対しては厳正に対処するとしています。今回の訴訟は正確な情報を伝えないまま契約を進めた行為を信義則違反とした判決ですが、企業活動に契約締結行為が不可欠である以上、同様のケースは全ての企業において想定されます。法務担当者としては、自社の営業担当者が商談時にどのような商品説明を行っているのかを定期的に把握したうえで、「説明の態様に、後日、信義則違反を主張されるリスクは潜んでいないか」を精査する機会を設ける必要がありそうです。
 

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