はじめに
2022年4月26日、環境省は「脱炭素経営の促進に関する各種ガイドの策定」について情報開示を行いました。今回のガイドライン策定の背景には、ESG金融や脱炭素経営に取り組む企業の急増が挙げられています。今後企業の経営を考える上でも、脱炭素経営は重要なキーワードになるでしょう。そこで今回は、対象となる4つのガイドラインの内容について詳しく見ていきます。
TCFDガイドラインの改訂
TCFDとは、G20の要請を受け設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」のことです。「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド 2021年度版」では、このTCFD提言に沿った情報開示に対応するよう、企業の気候関連リスク・機会に関するシナリオ分析を行う手順を具体的に解説しています。日本企業のシナリオ分析の実践事例として環境省支援事業参加13社の情報を掲載しているほか、1.5℃シナリオのパラメータに関する豊富な情報や、国内外のTCFD関連文献一覧表が新たに追加され、より成功事例を参照しやすくなっています。
GHG排出削減計画策定ガイドブック改訂
SBT(Science Based Targets)とは、パリ協定を念頭に置いた温室効果ガス排出削減目標のことです。「SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブック 2021年度版」では、企業の長戦略として排出削減計画策定に向けてどのように取り組むのか、手順や重要な視点、国内外企業の事例、参考データ一覧が整理されています。
中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック
「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック-温室効果ガス削減目標を達成するために-Ver.1.1」では、中小企業における中長期の削減計画の策定に向け、中小企業が取り組むメリットを紹介しています。また、企業が省エネ・再エネを活用したり、二酸化炭素の削減対策の計画を取りまとるための検討手順を6ステップで精緻化して整理しています。さらに、中小企業が実践可能な脱炭素への取組事例を環境省支援事業参加16社にわたり掲載されています。
インターナルカーボンプライシング活用ガイドライン
「インターナルカーボンプライシング活用ガイドライン~企業の脱炭素・低炭素投資の推進に向けて~(2022年3月更新)」では、読者として企業の経営層や環境関連部署の担当者が想定されています。本ガイドラインでは、企業の脱炭素の取組を推進する手法「インターナルカーボンプライシング(ICP)」を導入する際のポイントや具体的な実施手順について解説がおこなわれています。また、ICPに関する国際的な議論・事例集が掲載されているほか、実践する際のポイントも追記されています。
コメント
日本のTCFD賛同数、SBT認定企業数、RE100参加企業数は、いずれも世界トップクラスの数値を誇っており、サプライチェーンを通して中小企業にも脱炭素への活動が徐々に浸透してきています。脱炭素はSDGsなど環境問題でも盛んに議論が行われているトピックであり、国内中小企業もますます社会的責任を果たすことが求められています。今回のガイドラインの改訂ではいずれも取り組み事例や参考資料の追記が行われ、より脱炭素ガイドラインとして役立つものになっています。
令和4年4月1日より施行された改正地球温暖化対策推進法では、「パリ協定」で示された目標や「2050年カーボンニュートラル宣言」が基本理念として明確に位置付けられ(第2条の2)、事業者の責務としても、①事業活動に関する温室効果ガスの排出の量の削減等のための措置を行う努力義務、②国及び地方公共団体が実施する温室効果ガスの排出の量の削減施策への協力義務が明記されています(第5条)。今後、法務としても、カーボンニュートラル関連の規制へのアンテナを張り続ける必要がありそうです。
【関連リンク】
本記事で紹介した各ガイドは下記にてダウンロードできます。
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企業の脱炭素経営への取組状況(環境省)