Quantcast
Channel: 企業法務ナビ
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2999

グローバルダイニング、「コロナ違憲訴訟」判決結果を公表

$
0
0

はじめに

2021年は新型コロナウイルス感染症への対策が求められ、国だけでなく各自治体が強いリーダーシップで封じ込めの施策をとることが求められました。特に東京都は感染者が爆発的に増え、都の時短命令と飲食店の反発が日夜ニュースで取り上げられていました。これに関連し、東京都の大手飲食チェーン「グローバルダイニング」(東京都港区)は、東京都が新型コロナウイルス感染症対策として行ってきた飲食店に対する営業時短命令の違法性について損害賠償を求めていましたが、2022年5月16日、東京地裁により判決が出されました。今回は、一連のコロナ違憲訴訟の流れや結果について詳しく見ていきます。
 

訴訟の背景

グローバルダイニングは都内を中心に、「モンスーンカフェ」「カフェ ラ・ボエム」「権八」など複数の飲食店チェーンを展開してきました。事の発端はコロナ禍の2021年1月、東京都から出された緊急事態宣言下で、都から営業を午後8時までに時短する要請を受けたことからはじまります。同社は、これを法的根拠のない命令と拒否しましたが、同年3月18日に新型インフルエンザ等対策特別措置法第45条3項に基づく時短命令を受けます。同特措法に基づく命令が出されるのは全国初であり、当時、時短命令の対象となった店舗27店中26店がグローバルダイニングの店舗でした。同社は宣言が解除された同月21日までの4日間命令に従い、午後8時に閉店していました。
 

■新型インフルエンザ等対策特別措置法 第45条3項 施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請(※ 特定都道府県知事による施設使用制限又は停止の要請等)に応じないときは、特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを命ずることができる。 e-Gov法令検索|新型インフルエンザ等対策特別措置法

 

訴訟の内容

グローバルダイニングはこの都の措置を「狙い打ちされた」と考え、 ・時短要請に応じない正当な理由があったこと ・時短命令発出の必要性が認められず同命令は違法と解せられること ・新型インフルエンザ等対策特別措置法及びこれに基づく時短命令は、憲法上認められる営業の自由・表現の自由を侵害し違憲であること ・時短命令に従って営業時間を短縮した結果、売上高が下がり営業損害を被ったこと などを理由に、国会賠償法1条1項に基づく訴訟を提起しています(請求額104円 ※上記損害の一部)。 なお、同社は「コロナ禍検証PLATFORM」という特設サイトを立ち上げ、弁護士などをメンバーとして意見を表明しています。 グローバルダイニング|コロナ禍検証PLATFORM
 

判決の結果

東京地裁の判決では、都が出した特措法の命令は、本来「特に必要があると認めるとき」に限定して有効であるとし、「不利益処分を課してもやむを得ないと言える程度の個別の事情が必要」であるとしています。その上で、グローバルダイニングの各店舗はコロナ感染防止のための換気や消毒などを十分に実施し、クラスターが起きるリスクは特に高くなかったこと、都は命令発出以前に店舗の対策の実情を確認していなかったこと、命令時点では新規感染者は減少傾向で緊急事態宣言の解除も3日後に控えていたこと、4日間のために命令を出す必要性に合理性はないことを指摘し、「命令は特に必要とは認められず違法」と判断しました。 一方で、今回の命令発出は全国初のものであり、都知事において、要件該当性を判断するための先例がなかったこと、行政処分が違法でも違法であることを予見できない事情がある場合には国家賠償法1条1項にいう「過失」はないとする判例があること(最判平3年7月9日 民集45巻6号1049頁、最判平16年1月15日 民集58巻1号226頁)などを踏まえ、「都知事が今回の時短命令を発出したことに過失があるとまではいえない」と損害賠償責任については否定しています。また、今回の命令の違憲性についても「特措法の目的に照らして不合理な手段とは言えない」として認めませんでした。
 

コメント

今回の判決を受け、グローバルダイニング代表取締役社長の長谷川耕造氏は、都が出した命令の違法性が認められたことには満足しつつも、損害賠償などが否定されたことに対しては納得しておらず、控訴審へ進むことを表明しています。長谷川氏はコメントで「棄却と聞いてびっくりしたが、75%は主張が認められた」としています。また、弁護士の倉持麟太郎氏も、「都知事自身の認識を証人尋問で問えなかったことは不服だった」とし、控訴審で再度今回のような主張をすることを表明しています。コロナは変異株が国内に入り込むなど、未だに収束の兆しが見えておらず、都はこれまでに時短命令を計192件出しています。今後の控訴審の動向によっては、都の姿勢や飲食店側の対応も変わってきそうです。
 

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2999

Trending Articles