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東京機械製作所、金融商品取引法に基づき元主要株主を提訴

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はじめに

株式会社東京機械製作所は2022年6月6日、同社の主要株主であったアジアインベストメントファンド株式会社(以下、「A・I・F社」)に対し、A・I・F社が行った東京機械製作所株式の短期売買取引に関し、金融商品取引法第164条第1項に基づく「利益の提供を求める訴え」を提起したことを文書で公表しています。訴訟の提起先は東京地方裁判所で、具体的には、短期売買に係る利益及びこれに対する遅延損害金の支払いを求める内容となっています。本記事では、東京機械製作所の訴えの内容について詳しく見ていきましょう。
 

訴訟の経緯

東京機械製作所は、2022年4月15日、関東財務局から金商法第164条第4項に基づいた「利益関係書類」(写)を受領しています。利益関係書類とは、会社の主要株主から提出された「役員又は主要株主の売買報告書」の記載に基づいて、同法第164条第1項の規定から利益を算出し、結果として利益を得ている売買が認められると証明できる書類のことです。本利益関係書類によれば、同社の主要株主であった取引者であるA・I・F社が株式の短期売買取引により利益を得たと判断されるとのことです。これにより、東京機械製作所は、A・I・F社に対して、金商法第164条第1項に基づき、利益を提供するよう請求していましたが、それでも利益の提供が一切なされていないため、支払いを求めて本訴の提起に至っています。
 

金融商品取引法の具体的な規定

金融商品取引法の第百六十四条では、「上場会社等の役員等の短期売買利益の返還」についての規定があります。同条第4項では、「内閣総理大臣は、利益関係書類に基づき、上場会社等の役員又は主要株主が第一項の利益を得ていると認める場合、当該利益に係る部分の報告書の写しを当該役員又は主要株主に送付し、当該利益関係書類に関し次項に定める期間内に同項の申立てがないときは、当該利益関係書類の写しを当該上場会社等に送付するものとする」旨規定されています。ちなみに、ここで言う、“第一項の利益”とは「上場会社等の役員又は主要株主がその職務又は地位により取得した秘密を不当に利用することで得た利益」のことです。
 

金融商品取引法第164条1項 上場会社等の役員又は主要株主がその職務又は地位により取得した秘密を不当に利用することを防止するため、その者が当該上場会社等の特定有価証券等について、自己の計算においてそれに係る買付け等をした後六月以内に売付け等をし、又は売付け等をした後六月以内に買付け等をして利益を得た場合においては、当該上場会社等は、その利益を上場会社等に提供すべきことを請求することができる。

 

東京機械製作所の今後の対応

東京機械製作所はA・I・F社に対して、短期売買に係る利益及びこれに対する遅延損害金として、19億4,342万3,161円と、2022年5月25日から支払済みまで年3分の割合による金員の支払を求めています。また、東京機械製作所は2022年6月6日訴訟提起のお知らせに続き、翌日も東京機械製作所は文書を公表しています。文書によりますと、 東京地方裁判所はA・I・F社に対する短期売買利益提供請求権の一部を被保全権利とし、A・I・F社が取引銀行に保有している預金債権1億円(預金債権)と、A・I・F社が証券会社の口座で保有している当社株式を対象とする仮差押命令の申立てを認める決定を行っていたところ、7日に預金債権と東京機械製作所の株式510,300 株の仮差押えが有効になされていることが確認できたとのことです。仮差押え後の経過については同社の発表を待つことになりそうです。
 

コメント

今回、訴訟提起されたA・I・F社は、投資会社「アジア開発キャピタル」の子会社ですが、アジア開発キャピタルはA・I・F社を通じて東京機械製作所の株式を買収目的で買い集めていました(2021年9月時点で議決権の約4割を取得)。これに対し、東京機械製作所は、既存株主に対し、新株予約権を無償で与え、アジア開発キャピタルの株式保有割合を下げる買収防衛策で対抗。アジア開発キャピタルは、株主平等原則違反(会社法第247条1号)及び著しく不公正な方法による決定(同条2号)を理由に、同決定の無効を訴える仮処分を申し立てましたが、最高裁までもつれた抗告も棄却され、東京機械製作所の買収防衛策が認められています(最終的に、アジア開発キャピタルが株式を買い増さない約束を行ったため、2021年11月25日、東京機械製作所は同買収防衛策を発動させない旨を発表しています)。こうした背景を元に提起された今回の訴訟、その趨勢が注目されます。
 

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