はじめに
アステリア株式会社は2022年6月10日、同月25日に開催を控える定時株主総会において、リアルな会場を必要としないバーチャルのみの株主総会を開催する旨、報道発表を行いました。ブロックチェーン技術を基盤として、改ざん不可で透明性の高い株主総会の議決権投票や質問受付、動議手続きを実現するとしています。今回の記事では、アステリアが目指す株主総会像について詳しく見ていきましょう。
25日に控える株主総会の概要
2021年6月に施行された改正産業競争力強化法第66条1項に基づき、リアルな会場を必要としない株主総会の開催が可能になりました。アステリア社は同法の改正に合わせて2021年の定時株主総会で定款を変更し、自社で独自に開発したブロックチェーンを基盤とした議決権投票、質問受付、動議手続きなどが可能なシステムを備え、バーチャルオンリー株主総会が実施できる体制を構築しています。最近話題となっている「web3.0」は、真正性の担保、改ざん耐性、非中央集権型の構造などブロックチェーン技術によって支えられています。6月に内閣官房で開催された「新しい資本主義実現会議」でも、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画(案)」にて「Web3.0 の推進に向けた環境整備」が明言されているなど、今注目の技術です。アステリア社は、Web3.0 の環境において様々な社会活動が行われることに備え、企業最大の意思決定機関である株主総会で株主が行う全ての行為の公正性と透明性を担保する仕組みをブロックチェーンで実現すると述べています。
アステリア社独自のブロックチェーン議決権投票システムの特長
アステリア社のブロックチェーン議決権投票システムの主な特徴としては、
①議決権を有する株主約1万名にブロックチェーンのトークンを議決権として発行できる
②株主による全ての権利行使をブロックチェーン上に記録することで、投票内容の改ざんや質問のチェリーピッキング(事前に質問内容を把握した会社側が、会社に不利な発言を取り上げない等)が実質不可能になる
③PCやスマートフォン等のブラウザから議決権投票・質問・動議を簡単に行える
④ブロックチェーンは企業向けに適しているとされるEthereumとして注目を浴びているQuorumを採用
⑤スマートコントラクトによって、賛否を問う3議案7項目の処理を実施
などがあげられています。
コメント
アステリア社によると、今後のスケジュールとしては、6月9日に第24回定時株主総会招集通知にブロックチェーンによる議決権行使案内を同封して発送、24日までを事前投票期間とし、株主総会当日である25日もブロックチェーンによる議決権行使や質問の受付を実施するとしています。また、同社は、ブロックチェーンを用いたバーチャルオンリー株主総会を可能とするシステム自体を、上場企業など企業向けサービスとして展開していく予定だそうで、行政やエンターテイメント領域における投票・集計方法や結果に公正性を担保できる仕組みとして拡張する計画があると述べています。
現状、バーチャルオンリー株主総会の開催が認められるのは、産業競争力強化法の対象となるような上場企業のみですが、社会全体の流れを見たときに、早晩、非上場の中小企業においてもバーチャルオンリー株主総会の開催が認められる日が訪れそうです。アステリア社が今後に向けて、どのようなシステムを開発・運用していくのか、スケジュール等も含めた具体的な計画は報道資料には記載されていませんが、アステリア社の自社開発システムがより広い領域で使われる日が来るかもしれません。