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フレアス、従業員の売上不正報告に関する社内調査結果を公表

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はじめに

株式会社フレアスは、従業員の不正行為による売上過大計上発生に伴い、同様のオペレーション体制となっている事業所に対する追加調査と会計監査人による追加監査が行われていました。この度、これらの調査及び監査が終了したことから、調査結果と今後の対応を公表しました。そこで今回は、フレアス社の調査結果や対応方針について確認しておきましょう。
 

不正行為発覚の経緯について

株式会社フレアスは東証グロース市場に上場中、東京に本社を構え、マッサージ事業やマッサージフランチャイズ事業を展開する企業です。2022年7月に、首都圏の A 事業所の人員体制の変更を行い、営業業務と事務業務の兼務を解消するため、新事務業務担当者を配置していました。 2022年7月29日に当該事務業務担当者が売上報告をするために使用する書類を確認したところ、前任の従業員(以下、「前任者」)による不正が疑われる書類が見つかったため、上長に報告が行われました。 同日には前任者へのヒアリングを行い、同人から不正を認める発言が得られたため、7月29日~8月9日にわたり社内による A 事業所の書類精査、前任への複数回のヒアリングが行われました。その結果、2019年7月から2022年7月までの間に総額6,647千円の不正な売上報告がなされていることが判明しました。 フレアス社は2022年5月から営業業務と事務業務の担当者を兼任させないように体制整備を進めていたところでしたが、A 事業所で前任者が営業業務と事務業務を長期にわたり兼任していた実態があり、これを放置していたことが本不正の発生要因とされています。 本件を受けて、フレアス社は過去に同様の兼務体制となっていた事業所について追加調査を行っています。調査対象件数は、2事業所で合計263名に対して行われました。
 

調査結果と今後の対応

調査の結果、追加調査の対象となった2事業所においては、売上報告資料の不正行為は発見されませんでした。また、今回の不正行為発覚を受けて、フレアス社では次の3つの問題点を挙げています。 ①営業業務と事務業務の兼務体制のリスクを認識し、取り組みを行いながら徹底できていない環境を容認していたこと ②事業所での資料保管を前提としていたこと ③本社機能による二重チェックの仕組みが構築できていなかったこと の3つです。この現状認識からフレアス社では、事業所の体制・統制環境の見直しとして、営業業務担当者と事務業務担当者の分離を徹底し、内部牽制を強化することや、売上報告資料の事業所内での確認・保管としていたフローの見直しを徹底することを今後の課題としています。また、役員・その他管理部門等の体制・統制環境の見直しも行われるなど、再発防止に向けて組織体制を変革していく姿勢も見られます。
 

今回の不正行為発覚の影響

フレアス社では、再発防止策の実施及びモニタリングについて、2022年8月より施策を推進・実行し、進捗状況を適宜取締役会にて報告を行ったうえで、適切なモニタリングも実施するとしています。今回の不正行為の発覚による業績への影響としては、売上高の過大計上 6,647千円が2020年3月期から2023年3月期にかけて計上されることとなります。また、同社では、連結業績予想の修正もないものとしています。
 

コメント

フレアス社は今回の不正行為発覚を受けて、不正行為を行った本人に対して2022年8月 19日に懲戒解雇処分の手続き中であることを言い渡しています。文書の最後で同社は、本件不正行為を厳粛に受け止め深く反省すること、当社グループ全体の内部統制の充実・強化及びコンプライアンス遵守の意識徹底を図ること、再発防止と信頼回復に全力を上げて取り組んでいくとしています。 今回の事例は、コンプライアンス体制構築時にしばしば議論となる、「従業員に対し性悪説で考えるか、性善説で考えるか」というテーマを想起させます。すなわち、「人間の本性は悪であり、適切な規範によりこれを制御しなければならない」と考えるか、「(教育による善の素養の継続的な付与がある限り)人は生来、他人への思いやり・善悪の分別・不正を恥じる気持ちなどを備えている」と考えるかという議論です。 性悪説に立つ場合、“不正が出来てしまう環境があること”が、不正発生の最大の原因と考えますが、そうした環境面からのアプローチだけでは、抜け道探しのイタチごっことなり、従業員による不正は防げないように思います。 法務コンプライアンス担当としては、環境面の整備に加え、不正を行うに至った心理的動機を掘り下げ、例えば、売上ノルマに対する過度なプレッシャーがなかったか等の調査・考察・分析も合わせて行うことが重要になるのではないでしょうか。
 

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