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新型コロナウイルス関連の労災給付、計4万6000件に

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はじめに

厚生労働省は,新型コロナウイルスのり患による労災給付に関し、延べ約4万6000件が支給決定されたことを明らかにしました。昨年12月,厚生労働省は「一定の要件の下,新型コロナウイルスに感染した業務従事者に対し,労災保険給付の対象となる」旨を発表しましたが、2022年7月31日時点で,請求件数は6万33件であったところ,そのうちの約4万6000件に支給決定がされており,約1万4000件に関しては支給決定が出なかったこととなります。支給決定が出た中での内訳は,医療従事者等が3万1891件,医療従事者等以外が1万4130件でした。
 
 

新型コロナウイルス労災認定の要件

 新型コロナウイルスのり患による「労災」と認定されるための要件は以下のいずれかです。 (1)感染経路が業務によることが明らかな場合 (2)感染経路が不明の場合だが,感染リスクが高い業務に従事し,それにより感染した蓋然性が強い場合 上記(2)の「感染リスクが高い業務」とは,複数の感染者が確認された労働環境下での業務や,顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下の業務をいいます。そのため、医師・看護師や介護の業務に従事される方々については,業務外で感染したことが明らかな場合を除き,原則として労災認定の対象となります。また、症状が継続し,療養等が必要と認められる場合も保険給付の対象となります。
 

新型コロナウイルス労災認定の事例

(1)社会福祉・介護事業に従事していた介護職員の事例 本件では感染経路は特定されませんでしたが,介護施設で日々複数の感染が疑われる介護利用者に対する介護業務に従事していたことから,新型コロナウイルスのり患による労災と認定され,労災給付が支給決定されました。 (2)飲食店員の事例 本件では,飲食店内で接客業務に従事していた店員に対し,店内でクラスターが発生し,これにより感染したと認められたことから労災給付が支給決定されました。 (3)建設作業員の事例 本件では,建設作業勤務中,同僚と作業車に同乗していたところ、後日、作業車に同乗した同僚が新型コロナウイルスに感染していることが確認され、当該同僚から感染したと認められたことから、支給決定されました。
 

労災保険の種類

 労災保険の種類としては,療養補償給付・休業補償給付・遺族補償給付とあります。まず,療養補償給付に関しては,労災指定医療機関を受診すれば,原則として無料で治療を受けることができます。また,やむを得ず労災指定医療機関以外で治療を受けた場合,一度治療費を負担してもらい 後で労災請求をすることで、負担した費用の全額が支給されます。次に,休業補償給付に関しては,療養のために仕事を休み、賃金を受けていない場合、給付を受けることができます。 その際,給付日は休業4日目から,給付額は休業1日あたり給付基礎日額の8割となります。最後に,遺族補償給付に関しては,業務に起因して感染したため亡くなった労働者のご遺族の方は、遺族補償年金、 遺族補償一時金などを受け取ることができます。
 

コメント

 保険給付の請求自体は、正社員・パート等の雇用形態に関わらず労働者自身が行うため、法務担当者からすると、一見、このテーマは業務上関係性が薄いように見えます。しかし、自社の従業員が新型コロナウイルスにり患し労災認定された場合、従業員が企業に対し、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求を行うことも想定されます。  労災認定は、企業側の過失の有無に左右されない性質を持つのに対し、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求においては、企業側の過失の有無が焦点となります。一つの目安として、監督官庁が発信している衛生管理のガイドラインの遵守状況が、企業側の過失の認定を左右するという話もあります。万が一の損害賠償リスクを下げるため、自社の新型コロナウイルスの衛生管理体制に着目することも重要になりそうです。
 

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