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Twitter社、大量解雇で訴訟の動き/外資系労働者の紛争について

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はじめに

 ツイッター社での大量解雇が日本法人も対象となることを受け、一部弁護士から同社への訴訟を呼びかける動きが出ています。整理解雇の要件を満たしていない可能性が高いとのことです。今回は外国法人と労働者の紛争について見ていきます。
 

事案の概要

 報道などによりますと、ツイッター社を買収したイーロン・マスク氏は同社の従業員の約半数を解雇するとし、日本法人もその対象となると発表しました。同社日本法人であるツイッタージャパンでは、現時点ではまだそのような通知が来ただけの段階とされ、今後具体的に退職金などの話し合いが行われる見通しとされます。しかし一方で米国と異なり日本では整理解雇には厳格な要件があり、このような一方的な整理解雇は違法である可能性があると見られ、アトム法律事務所の岡野弁護士など一部の弁護士が同社を解雇された元従業員に相談に応じるなど呼びかけているとのことです。訴訟になった場合、米国法ではなく日本法が適用されるかが争点となってくるものと予想されます。
 

外国法人とその従業員との紛争

 従業員の労働関係紛争に限らず外国法人との間で紛争が生じた場合、国内での紛争とは異なった問題が生じてきます。それが準拠法と裁判管轄の問題です。どちらの国の法律に基づいて判断するかが準拠法の問題と言えます。そしてそもそも日本の裁判所で判断できるのかという点が裁判管轄の問題です。まず準拠法については、「法の適用に関する通則法」という法律によって決まることになります。通則法では原則として、当事者間で合意がある場合はその合意に従うこととなります。契約等で予めどの国の法律によるかが定められることが多いと言えます。この合意が無い場合は最も密接な関係がある地の法が適用されることとなります(8条1項)。そして労働関係に関しては特例が設けられており、準拠法についての合意がある場合でも、労働者に最も密接な関係がある地の法律の強行規定の適用の意思表示をした場合はそれも適用されることとなります(12条1項)。また労務を提供すべき地が最も密接な関係がある地と推定されております(同3項)。つまり米国法による旨の合意があっても労基法などの強行規定も適用されるということです。
 

裁判管轄

 それではそもそも日本の裁判所で判断ができるのかという問題、裁判管轄はどうなるのでしょうか。管轄についても原則として当事者間の合意・契約によることとなります。しかし労働関係に関しては、その存否その他の労働関係に関する事項について労働者側から事業主に対して訴える場合、労務提供の地が日本国内にあるときは日本の裁判所に提起することができるとされております(民事訴訟法3条の4第1項)。つまり労働契約で米国裁判所を専属管轄とする条項が盛り込まれていた場合でも、労働者の勤務地が日本国内であれば日本の裁判所で訴訟ができるということです。またこれとは別に、被告側が管轄違反についての抗弁を提出せずに原告の請求内容に関する答弁書を提出するなど応訴すればその裁判所に管轄が生じることとなります(12条)。
 

整理解雇の要件

 労働者の問題ではなく、会社の経営合理化などの人員整理の必要性による解雇を整理解雇と言います。日本ではこの整理解雇について厳格な要件が判例によって確立してきました。いわゆる整理解雇4要件です。(1)人員整理の経営上の必要性、(2)解雇回避努力の履行、(3)被解雇者選定の合理性、(4)手続きの妥当性の4つの要件を満たす必要があり、これらを満たさない整理解雇は解雇権濫用として無効とされます。客観的に高度の経営危機に陥っており人員整理が必要な状況下で、役員報酬削減や希望退職の募集、配置転換など解雇以外の選択肢を模索し、さらに対象者の選定も合理的な基準の下でなされ、対象者には丁寧な説明と協議を重ねる必要があるということです。解雇は労働者にとって極めて大きな影響を与えるものであり、なんら責任がない労働者に解雇を強いることから裁判所は慎重に判断する傾向にあります。
 

コメント

 本件で米国ツイッター社を買収したイーロン・マスク氏は従業員の約半数を解雇するとし、その対象は日本法人も含まれるとしています。実際、日本法人でも退職勧奨は始まっていると言われています。米国では、At-will Employment(期間の定めのない労働契約は、いずれの当事者からも自由に解約できるというアメリカ合衆国労働法上の原則)のもと、日本よりも比較的、自由に労働者の解雇が行える環境があります。そのため米国では整理解雇が日本よりも頻繁に行われています。一方、日本では上記のとおり解雇には厳格な要件が設けられ、簡単には解雇できません。そのため通常、米国等の外国法人との契約では管轄は外国裁判所、準拠法も外国法との条項が設けられることがほとんどと言えます。しかし労働関係紛争では日本法が適用され、日本の裁判所で訴訟が可能な場合もあります。本件でも今後解雇されたツイッター社の元従業員による訴訟が提起される可能性はあると言えます。日本で事業を展開する海外法人はこれらの点も踏まえ、労務関係を今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。
 

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