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日本ケンタッキー・フライド・チキン、65歳まで店長職として再雇用へ

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Gerd AltmannによるPixabayからの画像

はじめに

日本KFCホールディングスグループの日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社(以下、「日本KFC」)は、11月1日、昨年4月に行われた高年齢者雇用安定法の改正を受け、2023年4月より、①店舗職員の継続雇用期間の70歳までの延長および②定年退職となる店長の店長職での再雇用を可能とするべく、継続雇用制度規程を改定する旨を発表しました。
 

事案の概要

ご存知のように、昨今の日本では少子高齢化が加速し、それに伴い、労働人口も減少傾向です。そのような状況下で、高齢者が持つ技能・ノウハウを定年後も活かすための制度が課題となっていました。こうした背景もあり、政府は令和3年4月1日、高年齢者雇用安定法を改正し、70歳までの就業機会の確保のために事業主が講ずべき措置(努力義務)等について改善を図りました。 このような政府の動きを受け、日本KFCは、来年4月から継続雇用制度を拡充し、定年後も引き続き65歳まで店長職を務められるように継続雇用制度見直す方針であることを公表しました。 労働力の確保等のために社内規程の変更を行う企業が増えていますが、本件における日本KFCの動きもこの一つに位置づけられると考えられます。
 

高年齢者雇用安定法の変遷

■令和3年の改正前からの内容 (1)60歳未満の定年禁止(高年齢者雇用安定法第8条) 事業主が定年を定める場合は、その定年年齢は60歳以上としなければなりません。 (2)65歳までの雇用確保措置 (高年齢者雇用安定法第9条) 定年を65歳未満に定めている事業主は、以下のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じなければなりません。そして、継続雇用制度の適用者は原則として「希望者全員」となります。 ①65歳までの定年引き上げ ②定年制の廃止 ③65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
 
■令和3年の改正後の内容 (1)65歳までの雇用確保(義務) (2)65歳から70歳までの就業機会を確保するため、高年齢者就業確保措置として、以下のいずれかの措置を講ずる努力義務を新設(令和3年4月1日施行) ①70歳までの定年引き上げ ②定年制の廃止 ③70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む) ④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入 ⑤70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入 a.事業主が自ら実施する社会貢献事業 b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業 以上の措置を講じる努力義務を新設しました。努力義務というのは、規定に反したとしても罰則が与えられるものではないため、企業に対する拘束力は高くありません。
 

日本KFCの「継続雇用制度規程」改定概要

【現行】 ■継続雇用期間: 65歳まで   ■職位: 再雇用者の職位は契約社員     【変更後】 ■継続雇用期間: 70歳まで ※定年後再雇用者の勤務場所は店舗に限る   ■職位: ・再雇用者の職位は契約社員 ・定年退職となる店長のうち、基準を満たした者を契約社員として店長職で再雇用 ・店長職での雇用期間は65歳が上限

 

コメント

再雇用と継続雇用とでは、大きな違いがあります。再雇用の場合は、定年年齢時に形式上退職した後、再度雇用する形になります。そのため、従前の役職は失い、雇用形態についても、契約社員・嘱託社員など、従前の雇用形態に縛られない新たな雇用形態(正社員→契約社員・嘱託社員等)で契約を交わすことができます。また、その際、勤務時間や勤務日数などの労働条件の変更も可能です。 それに対し、継続雇用の場合は、従業員は退職せずに従前の条件を原則維持したまま雇用を延長する形をとります。そのため、原則として、従前の役職や雇用形態、勤務時間・勤務日数、仕事内容などは大きく変わらないことになります。 日本KFCは今回、60歳まで店長職であった者に対し、継続して店長職であり続けるために継続雇用制度を取り入れるとしています。これは、人生100年時代と言われる時代を迎える従業員にとって喜ばしい制度であると同時に、使用者側としては、従業員を雇用し続けるという拘束力が生じることとなります。このような大企業の動きを受けて、各社がどのように動くか、動向に注目したいところです。
 

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