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関西電力、新電力の顧客情報を不正閲覧

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はじめに

関西電力株式会社の社員などが、子会社である関西電力送配電株式会社が管理する新電力企業(大手電力会社10社以外の電力会社)の顧客情報を不正に閲覧していたことがわかり、大きな波紋を呼んでいます。事態を受けて関西電力が調査を行ったところ、およそ8ヶ月間で4万件以上の顧客情報を閲覧していたことがわかりました。また、東北電力でも同様の問題が発生しており、経済産業省は遺憾の意を示すと共に、今後の対応を検討していくとしています。
 

不正閲覧の実態

報道などによりますと、不正に閲覧されていたのは、2022年4月から12月までの期間で、家庭向け契約の顧客情報4万806件です。関西電力の社員1000人以上が閲覧していました。 この問題が発表された直後は、閲覧された顧客情報は昨年9月からの3カ月間で1万4805件、閲覧者726人とされていましたが、調査を進めたところ、さらに多くの人数が関わっていたことが明らかになっています。また、閲覧した関西電力の社員のうち約4割は、「法律上、問題になり得ることを分かりながらも閲覧していた」ということです。 個人情報保護委員会への個人情報等の取扱いに係る報告について(関西電力送配電株式会社)
 

不正閲覧が行われた背景は

今回の顧客情報の不正閲覧が行われた背景には、2016年の「電気小売全面自由化」による競争激化があると言われています。 もともと、北海道は“北海道電力”、東北は“東北電力”といった具合に、地域ごとにひとつの大手電力会社が、発電・送配電・小売の3部門を全て押さえていました。 また当時は、発電や送電などにかかったコストに応じて電気の小売料金が決まる「総括原価方式」がとられており、電力会社としては、設備投資などに費やしたコストの回収が保証されている状況でした。こうした制度のもとに、日本のインフラ普及が大きく進んだのは事実です。 しかし、その後、設備投資などの経営面に不透明さがあるなどとして、「電力システム改革」が行われることとなり、発電・小売の2部門が自由化されました。自由化が認められたことを皮切りに、ガス会社や太陽光発電などの会社(新電力企業)が参入し始めたことで、関西電力をはじめとする各地域の電力会社が独占的に電力を生産・販売していた状況が一変しました。 その一方で、3部門のうち残り1部門である「送配電」については、もともと関西電力を含む大手電力会社がそれぞれの地域の鉄塔や送電線などの設備を有していることから、地域ごとの独占が維持され、新電力企業も同設備を通じて電力を供給しています。そのために、大手電力会社各社は、送配電部門を分化した子会社(以下、「送配電会社」)を設立しています。 送配電会社では、新電力の送配電を行うにあたり、新電力企業の顧客情報を持つことになります。電気事業法では、事業者間の公正な競争環境を確保するため、送配電会社が持つ新電力企業の顧客情報の共有を禁じています。 しかし、2021年時点で電力小売事業者はおよそ500社にのぼるなど、顧客獲得競争が激化。電力会社の収益の不確実性が高まる中、今回、関西電力や東北電力などで、新電力企業の顧客情報の不正閲覧が起こってしまった形です。
 

関西電力の対応は?

今回の問題を受けて、関西電力は調査検証・改革委員会を設置。原因究明を進めていくほか、体制面で問題がなかったなどの検証、再発防止対策の立案に取り組んでいくと発表しました。また、外部の弁護士などと連携し、関係者の処分を検討する方針とのことです。
 

コメント

競争が激化する中、ライバル企業の顧客情報を見ることができたなら。そんな妄想にかき立てられることはあれど、実際に1000人以上の社員が関わっていたというのに驚いた人も多いのではないでしょうか。電力カルテルによる巨額課徴金案に、常態化していた不正閲覧、今後、関西電力がどう生まれ変わるのか引き続き要注目です。
 

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