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岸田首相の少子化対策案で、育休前の手取りと同程度維持を実現へ

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はじめに

企業の育児休業制度が大きく見直されます。岸田首相は、少子化克服を目的として、産後の一定期間に夫婦ともに育休を取得すると、休業前の手取りと同程度の給付金を得られるようにする方針を表明しました。 『こどもファースト社会』の実現を掲げ、社会全体の意識改革を行い、あらゆる政策の共通目標とするということです。
 

政策の中身について

「これから6、7年が、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンス」と危機感を募らせる岸田首相は、男性の育児休業取得率の目標を2025年度は50%、2030年度は85%に引き上げるとしています。 このほかに、育児休業給付金については、出産後の一定期間、男女ともに取得した場合、給付率を手取りの10割に引き上げる考えを示し、出産で休業する以前と同程度の手取り額を確保できるようにしていくということです。 この給付金は時短勤務も対象となるほか、現在は対象外となっている非正規雇用の人やフリーランス、自営業者に対しても、新たな経済的支援創設を検討していくということです。 しかしここで課題となるのが「年収の壁」。 勤めている企業の規模によっては、年収が106万円や130万円を超えた場合に、扶養の対象から外れ、社会保険料などの負担が発生、結果として手取り額が減ってしまうため、特に配偶者が働く時間を抑制するという懸念があります。 これについて岸田首相は、「106万円の壁を超えても、手取りの逆転を生じさせない取り組みの支援などをまず導入する」と表明。 制度の見直しに取り組むことについて意欲を見せ、配偶者に扶養されている人が、パートなどで働く企業に助成金を出して、社会保険料の負担分を企業に肩代わりしてもらう方向で検討を進めています。 政府は、3月末にこうした子ども政策のたたき台を取りまとめるとしていて、6月に閣議決定する経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針」までに、子ども関連予算の倍増に向けて調整が進められていくとみられます。
 

少子化の現状

厚生労働省が先月公表した2022年の人口動態統計(速報)によりますと、外国人と海外で生まれた日本人の子どもを含む出生数は79万9728人。 国内生まれの日本人に絞り込んだ出生数(概数)は6月に公表されますが、国の推計方法で計算すると77万人台になるとみられています。 かつては第1次ベビーブーム期に約270万人、第2次ベビーブーム期の1973年には約210万人と現在の3倍以上の子どもが1年間に誕生していました。しかし1975年に200万人を割り込んで以降、毎年減少。1991年以降は増加と減少を繰り返し、比較的緩やかな減少傾向となっているものの、2019年には90万人を割り込んでいます。 近年では新型コロナなどが影響し、婚姻数が急減したことでより減少のスピードが速くなったと言われています。 (厚労省 人口動態統計) 一方で日本総研によりますと、少子化の進展を懸念せざるを得ない状況であるとはしつつも、「2020、21年は出産期にあたる年齢層の女性が相対的に増加し、それがわずかながら出生数押し上げに作用した。これは、出生数が120万人で安定していた1990年代生まれの世代が出産期に差し掛かったためであり、今後10年程度は若返りが続く見通し」という考察を記載し、今後10年が少子化対策のラストチャンスとしています。 日本総研 リサーチ・アイ 背水の陣で挑む、岸田内閣。 そこで打ち出したのが、こどもファースト社会です。大きなポイントは3つ。 1)子どもが主人公(チルドレン・ファースト) 2)「少子化対策」から「子ども・子育て支援」へ 3)生活と仕事と子育ての調和 今の日本にいる若い世代が家庭を築きつつ、子どもを生み育てるという個々人の選択が尊重されることができる社会を築くことを目的とされています。 いわば「未来への投資」と銘打ち、子ども・若者と子育てを応援する社会をみんなで作り上げていくということです。 内閣府 子どもと子育てを応援する社会に向けて
 

コメント

今回、国が推進しようとしている制度案をご紹介しました。法改正の内容によっては、企業側に新たな対応義務が生じる可能性もあるため、法務としてもアンテナを張っておく必要がありそうです。 また、近年、企業においても、家庭と仕事の両立を実現する育児休業制度の充実や、育休を終えた女性の再雇用の促進、時短勤務など自由度の高い働き方を可能にする労働環境づくりなど、様々な取り組みが行われています。 新制度が導入された場合、こうした企業側の取り組みがさらに加速することが考えられます。それに伴い、法務で制度設計や経営層・マネジメント層の啓もう・意識改革を行わなければならない場面も出て来るかもしれません。今後の少子化対策の動向に要注目です。
 

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