はじめに
クリエイターたちがAIによる権利侵害に関して「不安」を感じています。最近急速に活用が広がりを見せるAI。グラフィック作品などの創作も話題となっていますが、AIの活用場面の拡大がクリエイター達にもたらす影響は未知数です。 俳優や音楽家、イラストレーターなどで構成される一般社団法人 日本芸能従事者協会は、5月8日より文化芸能関係者を対象にAIリテラシーに関しアンケートを実施しており、このほど、同アンケートの中間結果を公表しました。クリエイターからの不安の声
AIを活用して制作した絵が海外のコンテストで優勝するなど、「AIで生成したものを芸術と呼ぶのか」、「そもそも芸術家とは何か」と、大きな議論を巻き起こしています。 企業も、ロゴや広告の制作等の発注を通じて一緒に仕事をする場面が多いクリエイター。商品の意図、製作過程、誕生背景などを反映したイラストや、世代に合った色使いをするなど、これまでAIには取って代わることができないと思われていた分野にもAIの波が押し寄せています。 協会の中間発表によりますと、アンケートに対し、5月14日の夕方までに2万5560件の回答が寄せられ、「AIによる権利侵害などの弊害に不安があるか」という問いに回答者の9割以上が「不安」と答えていたということです。不安の具体的な中身としては、「自分の作品を勝手に利用される(92%)」、「技術が奪われる(62%)」「報酬が安くなる(51%)」などが挙げられています。 AIがイラストなどを制作する際、これまでに公開された既存のイラストデータを学習して新しいイラストを生成します。そうしたことから、回答の中では、「人の絵を学習した上で似たものを作り出して利権を奪っていくのはどうか」という声が寄せられたほか、創作者の尊厳が軽んじられないような法整備の要望もあったということです。日本芸能従事者協会は今後、アンケートの結果を取りまとめ政府に伝える方針だということです。 「AIの急速な出現に関する日本芸能従事者協会との連帯声明」と「AIリテラシーに関する全クリエイターのアンケート」実施のお知らせ(一般社団法人日本芸能従事者協会)AIを活用した制作は盗用になる?
上述の通り、AIは既存作品に関する膨大なデータを学習して新たな作品を生成するため、他のクリエイターが既に制作した作品と類似することがあります。そのため、今後、AIが制作した作品がクリエイターの著作権を侵害したとして法的な問題を引き起こすことが想定されます。これは、企業が自社でAIを活用してロゴや広告等を制作した場合にも付きまとうリスクとなります。
■AIによる制作活動と権利侵害 1.著作権侵害 他のアーティストの著作物を無断で複製、改変、公衆への提供など 2.商標侵害 他のアーティストが商標を保有している特定のスタイルやロゴを模倣した場合 3.肖像権侵害 他人の人物写真をアート作品に使用し、許可を得ずに公開した場合、その人の肖像権侵害になる可能性 4.個人の名誉やプライバシーの侵害 個人的な情報を含む作品や名誉を傷つけるような作品を作成した場合、名誉毀損やプライバシー侵害などに発展する可能性 |