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JA職員、転売目的で農機具部品等を発注し横領

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はじめに

上伊那農業協同組合(以下、「JA上伊那」)は7月15日、同組合の農業機械課の職員2名が私的利用・転売目的で農機具部品などを発注して横領、その費用をJAや組合員に負担させるなどして損害を与えた旨、発表しました。会社のお金を使い込む、経費の不正使用について改めて考えていきます。
 

勝手に発注し、転売したケースも

JA上伊那の発表などによりますと、同組合の内部監査が端緒となり、横領疑惑が浮上したそうで、そこから伝票などを見返す等の調査が進められたということです。その結果、JA上伊那の農業機械課に所属する職員2人の横領および職員6人の私文書偽造が判明したといいます。 調査によると、職員らは、2017年から2023年3月にかけて、農機具部品や工具、生活用品を業務とは無関係に発注。目的は私的利用や転売をするためで、キャンプ用品としても役立つ保冷温庫やラジオ付きのランタン・車のブレーキパッドを自宅に持ち帰ったり、購入した発電機を転売して5万円を得る等していたということです。 支払った代金は、組合員がJAに支払う農機具の修理費に紛れ込ませるなどして、横領を繰り返していたということです。 JA上伊那は、費用をJAや組合員に負担させるなどして約231万円の損害を被ったとしています。 横領を行った2人については全額弁済されたことで刑事告訴は行わないとしていますが、懲戒解雇の処分を下していて、うち1人はすでに退職しています。 さらに私文書偽造を行った6人についても近日中に懲戒処分とする方針で、うち2人は懲戒免職となる見通しです。
 

経費不正の事例

今回のように会社の備品などを持ち出し・転売するなど、経費に関する不正は頻発しているといわれています。これらの行為は、場合によっては「横領」、「詐欺」などの犯罪に該当する可能性があります。経費に関する不正行為のパターンをまとめました。 (1)交通費水増し 嘘の住所や通勤経路を申告するなどの交通費の不正請求では詐欺罪、自身の立場を利用して交通費を不正に計上した場合には業務上横領の罪に問われる可能性があります。 (2)領収書の金額改ざん(接待交際費の不正計上) 飲食店から提供された白紙の領収書に金額を書き込んだり、接待で実際の人数や費用を水増ししたり、接待ではなく同僚との飲み会などを接待と偽った場合などが具体的な事例として考えられ、私文書偽造等罪が適用される恐れがあります。 (3)カラ出張 実際には出張していないのに、あたかも出張したかのように交通費や宿泊費を請求する行為を指します。架空請求の一種とみなされ、詐欺罪にあたる可能性があります。 (4)会社の売上や小口現金から金を着服 取引先から入金のあった金額の一部を着服したり、私用の領収書を紛れ込ませるなどのケースがあります。 (5)備品などを転売、換金 仕事で使っている資材や備品などを転売したりする行為を指します。「横流し」とも言われ、横領の一つとしてみなされます。 過去にも、経費の不正利用を理由に懲戒解雇になったケースが存在しています。しかし、不当解雇などを訴えて裁判に発展したこともありました。

◇旅行代理店・JTBでの裁判 個人的なゴルフや飲食代、家族旅⾏の費⽤を業務上必要な経費と偽って申請していた被告は、経費の不正受給を理由に懲戒解雇されました。しかし不正受給が理由での懲戒解雇は無効だと主張し、労働契約上の地位確認を求めた上、不正受給の調査などのために出勤停⽌となった期間の賃⾦が未払いであるため、その支払いなどを求めた裁判。   裁判所の判決では、ゴルフや家族旅⾏などの費⽤を業務上必要な経費と偽って申請し不正受給した事実は諭旨退職事由に当たると認定。さらに⾏為態様の悪質性と、会社組織秩序に与える悪影響の程度の2つの観点から、解雇権の濫⽤に当たらず有効と判断されました。

 

コメント

今回の事件を受け、JA上伊那は、コンプライアンスの実効性に問題があったものと厳粛に受け止め、職員の教育指導の徹底、コンプライアンス体制の強化に一丸となって取り組むと表明しています。 罪の意識の薄さから行われるとされる「経費の不正使用」。法務として、少額の経費の不正使用も犯罪の一つであることをしっかり周知していくとともに、不正を働きにくい仕組み作りにも携わっていく必要がありそうです。
 

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