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企業が守るべき最低賃金と年少者の労働時間

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1 事案の概要

 10月18日那覇市内の洋菓子店は従業員4人へ給与合計43万円を支払わず、さらに18歳に満たない高校生1人を午後10時以降に働かせたとして那覇労働基準監督署により最低賃金法違反及び労働基準法違反の疑いで書類送検されました。未払いの給与の内訳は、従業員女性に支払うべき給与10万831円とアルバイトの高校生3人に支払うべき給与計33万5410円です。さらに、18歳に満たない高校生1人を15年12月24日~25日と16年2月14日の午後10時以降も働かせていました。

2 最低賃金制度

 賃金額は、当事者間の合意によって決めるのが原則です。しかし、すべてを当事者に委ねてしまうと、労働者は立場が弱いので、非常に低い賃金となり生活が不安定になることがあります。そこで、賃金の最低額を法律により保障する制度(最低賃金制度)が作られました。
 そして、最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定められており、使用者がその最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です。労働者と使用者の間で最低賃金額より低い賃金で合意した場合には最低賃金法違反となります。その合意は無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとなります。
 したがって、使用者が、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなければなりません。また、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、50万円以下の罰金(労働基準法第24条第1項)となります。また、特定最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、30万円以下の罰金(最低賃金法第4条)となります。
 また、最低賃金の対象となるのは毎月支払われる基本的な賃金です。残業代やボーナスは含まれません。
厚生労働省
最低賃金法
労働基準法

3 最低賃金の種類

 最低賃金の種類は地域別最低賃金と特定最低賃金の二つに分かれます。
 地域別最低賃金とは、産業や職種に関係なく都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金を指します。特定最低賃金とは、特定の産業について設定されている最低賃金を指します。
(1)地域別最低賃金
 地域別最低賃金は、最低賃金審議会の調査審議に基づき、厚生労働大臣または都道府県労働局長が決定します。(最低賃金法第10条1項)また、実務では、中央最低賃金審議会が全国の都道府県を4つのランクに分けて毎年の改正の目安を示し、各都道府県の最低賃金審議会がこの目安額を参考にした審議を行い、当該都道府県の具体的な最低賃金額を決めるという運用が採られています。
地域別最低賃金の全国一覧

(2)特定最低賃金
 労働者または使用者の全部または一部を代表する者が、当該労働者または使用者に適用される一定の事業または職業に係る最低賃金の決定を申し出た場合に、最低賃金審議会の調査審議に基づいて、厚生労働大臣又は都道府県労働局長が特定最低賃金を決定することができます。(最低賃金法第15条1項及び第2項)特定最低賃金の額は、当該特定最低賃金の適用を受ける使用者の事業場の所在地を含む地域について決定された地域別最低賃金の額を上回るものでなければなりません(最低賃金法第16条)。もっとも、特定最低賃金違反については罰則の適用はありません。
特定最低賃金の全国一覧

4 最低賃金法が適用される労働者

 地域別最低賃金と特定最低賃金とで適用される労働者が異なります。
地域別最低賃金は、産業や職種に関係なく都道府県内の事業場で働くすべての労働者と使用者に適用されます。そして、パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託などの雇用形態を問わず適用されます。
 特定最低賃金は、特定地域内の特定の産業の基幹的労働者とその使用者に適用されます。もっとも、18歳未満又は65歳以上の方や雇入れ後一定期間未満で技能習得中の方やその他当該産業に特有の軽易な業務に従事する方などには適用されません。
 なお、一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの場合に最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭めるおそれなどがあるため、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として個別に最低賃金の減額の特例が認められています。なお、最低賃金の減額の特例許可を受けようとする使用者は、最低賃金の減額の特例許可申請書を都道府県労働局長に提出する必要があります。
 また、派遣労働者には、派遣先の最低賃金が適用されます。派遣労働者又は派遣元の使用者は、派遣先の事業場に適用される最低賃金を把握してください。
都道府県労働局
全国労働基準監督署

5 使用者の義務

 使用者は最低賃金以上の賃金を支払う義務があるのは当然です。また、使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者の範囲及びこれらの労働者に係る最低賃金額、算入しない賃金並びに効力発生年月日を常時作業場の見やすい場所に掲示するなどの方法により周知する必要があります。

6 年少者の就業

 年少者(満18歳未満の者)の法定労働時間は週40時間・1日8時間が原則となります。(労働基準法第32条、第60条)また、年少者保護のため変形労働時間制や時間外・休日労働及び労働時間・休憩の特例は認められていません。(労働基準法第32条の2から5) 
 さらに、年少者の深夜業(22:00から翌5:00までの業務)は、健康上及び福祉上特に有害であることから、原則禁止されています。(労働基準法第61条)ただし、16歳以上の男性を交替制で働かせることは以下の場合のみ例外として認められています。
 ①一定期間ごとに昼勤・夜勤が入れ替わる交替制で使用される16歳以上の男性
 ②交替制勤務の場合(労働基準監督署の許可を得て午後10時30分まで、または午前5時30分からの労働)
 ③農林水産業、保健衛生業、電話交換業務
 ④災害等による臨時の必要がある場合の時間外、休日労働
 また、以上の規定に反する場合には、使用者は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。

7 コメント

 最低賃金法に違反する使用者は30万円以下の罰金が課せられます。また、労働基準法に違反して年少者に深夜業務を行わせた使用者には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。さらに、処分を受けた場合、使用者の信頼も損ないます。
 したがって、使用者にはかなり大きな不利益を伴う処分だと思いますので、制度の確認及び規定の遵守が求められます。


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