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市有地を誤って売却した掛川市に4400万円の賠償命令

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はじめに

本来売却できない市有地を、掛川市が不動産会社に誤売却し、後に市が会社側に土地の返還を求めたことで始まった裁判。その二審判決が8月9日、東京高等裁判所で下されました。
 

行政財産を誤って売却

今回問題となった土地は、2002年に土地区画整理事業で掛川市の市有地となった「掛川市家代の里」の約3000平方メートルの緑地です。本来、行政財産として市で維持・管理すべき土地でしたが、掛川市は2018年、誤って普通財産として、市内の不動産会社に約1000万円で売却しました。 報道などによりますと、誤りに気付いた掛川市は、売却から1年後の2019年、不動産会社に買い戻しを要求。しかし話し合いはうまく運ばず、不動産会社側が2020年、「宅地造成の計画を中止せざるをえなくなった」などと主張し、開発が進んでいれば本来得られたと見込まれる利益など、約2億6000万円の損害賠償を求めて静岡地方裁判所に提訴しました。これに対し、掛川市も、土地の売却代金返還を引き換えとした登記の抹消を要求しました。 2022年10月の一審判決で静岡地方裁判所は、「市の職員が行政財産として管理すべきところ注意義務を怠り、不動産会社に誤売却した」として、掛川市に対し、不動産会社からの土地返却(登記抹消)と引き換えに約3500万円の損害賠償を支払うよう命じました。しかし、判決を不服として双方が控訴します。 掛川市側は「緑地がなくても開発を進められる」などと主張し、損害賠償額を争う姿勢を見せていましたが、東京高等裁判所は8月9日、市の対応が違法であったとして、掛川市に4400万円(土地代金含む)の賠償を命じると共に、不動産会社側に、賠償と引き換えに登記を抹消するよう命じました。
 

問題はなぜ起きた?

掛川市は今回の誤売却が起きた原因などについて市のホームページで公開しています。その文書では、大きく以下の3つの要因が挙げられています。 ①土地区画整理事業で市有地となった緑地を行政財産とせず、普通財産として管理することが慣行となっていたこと。 ②前副市長と管財課が中心となり、売却の2年前から売却を前提に検討されており、市長を含めた全庁協議の体制が構築されていなかったこと。 ③発覚後、相手方への迅速な対応がなされていなかったこと。  報告書では、まとめとして、「宅地開発が前提の緑地売却という極めて重要なことが、政策形成の段階で一度も市長に報告されていないこと、県からの指摘があった以降も、約一年間にわたり報告されていなかったこと、など不可解なことも残った」と締めくくられていました。いわゆる内部統制のシステムが整っていなかった可能性が指摘されます。
 

内部統制「情報と伝達」

内部統制とは、以下の4つの目的が阻害されるリスクを一定水準以下に抑制するべく、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスを指します。 (1)業務の有効性及び効率性 (2)財務報告等の信頼性の確保 (3)事業活動に関わる法令等の遵守 (4)資産の保全 ①統制環境、②リスクの評価と対応、③統制活動、④情報と伝達、⑤モニタリング(監視活動)、⑥IT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成されており、その重要性は、行政組織においても民間企業においても変わりません。 今回の掛川市のケースは、上記6つの基本的要素のうち、「情報と伝達」の問題として捉えることができます。 「情報と伝達」とは、組織内の全ての者が各々の職務の遂行に必要とする情報は、適時かつ適切に、識別、把握、処理及び伝達されなければならないとされているものです。つまり会社であれば、働く従業員全体が、 ・会社内のどのような情報の取り扱いがリスクにつながるのか ・そのリスクは具体的にどのようなものか ということをしっかりと理解した上で仕事ができる体制を確保する必要があるということです。 具体的には、以下のような方法で情報と伝達を実現していくことになります。 ・業務手続、システムの見える化の実施 ・リスク管理委員会などの会議体の設置 ・内部通報制度等の情報の窓口の設置 ・企業方針、社内規程などの周知で社内掲示板(イントラ)やメールなどを活用 この他にも、実際に上記が行われているかを定期的に評価することも重要になります。
 

コメント

市長に報告があげられなかったことに加え、問題発生後の市側の対応にも疑問点が残った今回の事案。掛川市長は、「今後の対応については、判決文を精査の上、検討したい」と述べています。 今後の裁判の行方はもちろんのこと、掛川市の内部統制の見直しにも視線が集まりそうです。
 

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