はじめに
台風、ゲリラ豪雨、線状降水帯がもたらす局地的大雨により、毎年日本各地で甚大な被害が発生しています。それはすなわち、会社が被害に巻き込まれ、事業に影響が出る可能性が否定できないことを示します。そこで見直したいのがBCP対策です。会社を豪雨災害から守るために今できることを考えます。
豪雨災害に悩む日本
毎年台風の被害を受ける日本列島。今年は台風6号が沖縄などに長期に渡り居座り続けた影響で、断続的な大雨となり、死者が出たほか、広範囲にわたり停電が続いた地帯もありました。直後に台風7号も発生し、鳥取で一部地域が孤立し救助活動が行われたほか、農業関係への被害が28億円以上にのぼる可能性があると報道されました。
7月にも秋田で記録的な大雨となり、広い範囲で住宅が浸水したほか、一部地域で断水が1週間以上続くなど、大雨が大きな被害をもたらしています。
2019年には、台風19号の被害がもたらした損失額が上場企業全体で約300億円となったという報道がありました。この台風では新幹線の廃車を決めたJR東日本とJR西日本が最も大きな損失額を計上していますが、製造業などにも深刻な被害があったことで、さまざまな業種で悪影響が出ています。
これまで大雨の被害が比較的小さかったエリアでも被害が確認されており、どの企業でも、今後、豪雨災害の被害を受ける可能性があります。
BCP対策していますか?
こうした中、改めて注目されるのがBCP対策です。BCP(事業継続計画)とは、Business Continuity Planの単語の頭文字をとった言葉です。企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの危機的な緊急事態に遭遇した場合において、損害を最小限にとどめ、中核事業の継続または早期復旧を実現するために、平常時から行っておくべき活動や緊急時における対応などを取り決めておく計画を指します。緊急事態発生時の倒産や事業縮小の回避が主な目的となります。
事業継続が危ぶまれるような緊急時に、発生すると想定されるリスクを洗い出し、事前に対策を考えるBCP対策。では、豪雨災害等に対し、どのような計画を立てればよいのでしょうか。
(1)従業員の被災
自宅~職場間の移動中に豪雨被害に遭遇する、テレワーク中の従業員が被害に遭い安否が確認できなくなるなどのリスクが考えられます。
【対策】
まず、自宅待機・帰宅命令の基準を明確化し、先手先手で出勤に関する指示を出す必要があります。そのうえで、例えば勤務中に被災した場合に備えて、社員の避難場所、経路、食料備蓄を確認しておくほか、ハザードマップを活用することも大切です。さらに、安否確認をどのツールを用いて行うのか、連絡体制のあり方などを事前に確認しておくことが重要になります。
(2)会社の設備・備品などの浸水被害
豪雨が発生した場合、破損・倒壊・床上浸水などで事業所内部に水が侵入してくることで建物自体が被害を受けてしまいます。さらに、工場などの設備や機械、オフィスで管理していたパソコンや重要な契約書類などが水没してしまうと大きな損害につながります。
【対策】
まず、豪雨発生に先立ち、土嚢などで浸水を防止したり、建物付近の排水路を掃除するなどの基本的な対策が考えられます。また、豪雨発生が予想されるときに、どの備品を誰がどこに移動させるかを事前に取り決め周知することが大切です。
(3)取引先の被災等による債務不履行
メーカー等の場合、原料調達先などの被災・物流網の寸断等により、製造ができなくなったり、製品の納入先に対し債務不履行を引き起こすリスクがあります。
【対策】
万が一、供給が途絶えてしまうことがないよう、備蓄可能な原料などを一定量保管しておくこと、他のエリアからの調達先を確保しおくこと、豪雨災害時の不可抗力免責に関し、事前に合意を取り付けておくことなどが重要です。
コメント
豪雨災害が発生した場合、従業員に対する安全配慮義務の問題や取引先に対する債務不履行責任が生じるおそれがあるため、法務としても、リスクの洗い出しやアセスメント、フローチャート作成や契約交渉など、BCP対策に積極的に関わることが推奨されます。
まずは、自社の対策状況を確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。
【関連リンク】
中小企業BCP策定運用指針(中小企業庁)