はじめに
1月に閉館していた青森県八戸市の映画館「フォーラム八戸」の運営会社である八戸フォーラムが6日の定時株主総会で解散していたことがわかりました。映画館再出店の可能性は模索し続けるとのことです。今回は会社法上の解散について見ていきます。
事案の概要
東奥日報によりますと、フォーラム八戸は入居していた商業ビル「チーノはちのへ」一帯での再開発計画に伴い、今年1月に閉館し、再出店に向けて移転先候補の検討を続けてきた一方、建築費高騰のあおりを受けて具体的な計画を立てられずにいたとされます。今月6日に開催した定時株主総会には約80人の株主が出席し、そのほとんどが会社の解散に賛成したとのことです。12月頃まで解散手続を進め、残余財産を株式の持ち分割合に応じて分配する予定とされます。同社社長は映画ビジネスについて、コロナ禍から回復してきているものの、現状では再出店はコストに見合わないとしております。
株式会社の解散事由
株式会社が解散する場合として、(1)定款で定めた存続期間の満了、(2)定款で定めた解散事由の発生、(3)株主総会決議、(4)合併、(5)破産手続開始決定、(6)解散を命じる裁判、(7)休眠会社のみなし解散が挙げられます(会社法471条)。株主総会で解散する場合は特別決議で可能です。そして休眠会社のみなし解散とは、会社に関する登記が最後になされてから12年間登記がなされていない場合に、法務大臣による2ヶ月間の公告を経て解散したものとみなされます(472条)。これは事業を廃止したのに解散登記をしていない会社を整理することを目的としております。なおこのみなし解散の場合でも解散から3年以内であれば株主総会の特別決議をすることによって継続することも可能です。
精算手続
会社が解散した場合、まず解散登記をすることとなります。解散登記がなされると監査役以外の役員や支配人などの登記が職権で抹消されることとなります。そして清算人が就任し精算を行っていきます。精算手続は具体的には現務の結了、債権の取り立て、債務の弁済、残余財産があれば分配となります。解散した株式会社は解散後遅滞なく2ヶ月位上の期間を定めて債権者に債権を申し出るよう官報で公告します(499条)。債権債務の整理をして残余財産を株主に分配し、株主総会で決算報告の承認を経たら清算結了登記をして精算手続は終了し、登記簿も閉鎖となります。なお上述のとおり2ヶ月以上の期間を定めた債権者への公告が必要であることから、解散後、2ヶ月を経過しない精算結了登記は申請しても却下されます。
会社の継続
上でも触れたように、会社は解散しても株主総会の特別決議により解散を取りやめて継続することが可能です(473条、309条2項11号)。継続ができるのは定款で定めた存続期間満了、定款で定めた解散事由の発生、株主総会決議により解散した場合、みなし解散の場合に限られ、裁判所による解散判決の場合は不可となります。継続の登記をするに際しては、同時に新しく選任した取締役等の役員の就任登記をする必要があります。解散によって取締役等の役員が抹消されているためです。なお監査役については解散によって退任はしないので改めて就任登記することは不要です。解散前の会社が取締役会設置会社であった場合、継続に際しては取締役会設置会社である旨の登記も必要となります。
コメント
本件で八戸フォーラムは定時株主総会によって解散したとされます。出席株主のほとんどが賛成したとされることから特別決議の要件は満たしているものと思われます。また借入金は既に返済し、債権債務は整理したとされ、公告期間経過後、残余財産分配を経て精算結了するものと予想されます。以上のように会社は株主総会の決議によって解散することも、また同じように株主総会によって継続することも可能です。また会社の登記を12年間行わなかった場合、公告を経て解散したものとみなされることもあります。取締役の任期が最大で10年であることから、廃業していない会社が12年間登記が無いということが想定できないためです。小規模な同族会社であっても適切に登記をしているか、今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。