はじめに
11月27日、日本大学副学長が理事長の林真理子氏を提訴しました。同大のアメリカンフットボール部で薬物が見つかった事件の対応に関連し、理事長からパワーハラスメントにあたる発言や行動があったとのことです。副学長がパワハラを理由に理事長を提訴
日本大学のアメリカンフットボール部の男子部員が学生寮で乾燥大麻と覚醒剤を隠し持っていたとして8月に逮捕された事件。部員3人が逮捕されるなど、世間を大きく賑わせました。この事件への対応をめぐり、林真理子理事長からパワハラを受けたとして、副学長の沢田氏が11月27日、1000万円の損害賠償を求める訴えを東京地方裁判所に提起しました。 沢田氏は今年8月22日~9月7日にかけて、林真理子理事長より以下のパワハラを受けたといいます。 ・合理的な理由を告げられることなく、ほぼ全ての主要な会議への出席を禁止する命令を出された ・9月4日に理事長室で薬物事件対応の責任を取るよう伝えられた際、「警視庁による沢田氏への捜査が進んでいる」などと事実とは異なる発言をされた ・日付が空欄の辞任届を出すよう求められた 沢田氏側は、林理事長の一連の言動を「故意に相手をおとしめる違法なパワハラだ」と指摘。また、出席禁止命令は業務上の必要性や社会的相当性を欠いており、沢田氏のみに責任があるとする「印象操作だった」と主張しています。大麻問題をめぐる大学側の対応
一連の大麻問題への対応をめぐっては、沢田氏がアメフト部の寮内から植物片と錠剤を発見しながら、警視庁への報告がその12日後と遅れた点(いわゆる「空白の12日間」)が問題視されています。この点について沢田氏は会見で、植物片が大麻ではないかと疑いを持ったことを認めつつ、「学生が反省するなら自首させたい。われわれは捜査機関ではなく教育機関」と発言しました。 沢田氏のこうした発言は、証拠隠滅や犯人隠避に問われるのではないかと議論を巻き起こし、また、10月に公表された第三者委員会の報告書でも、この空白の12日間が「法人の信用を著しく失墜させた最大の原因」と指摘されています。 今月22日に開かれた大学の臨時理事会では、 (1)沢田氏の直ちの辞任 (2)今年度末での学長の辞任 (3)林真理子理事長の50%減給(6ヶ月間) が勧告されていました。これらの案について、3者共に受け入れる意向とのことです。1000万円に“異例”の声
今回、沢田氏が求めた賠償金額の大きさも注目されています。一般的に、パワハラの慰謝料は30万円〜200万円が相場と言われています。その一方で、ハラスメントが原因で被害者が亡くなった場合や入院などで就業不能状態に追い込まれた場合などには、相場よりも高額の賠償金が認められるケースがあります。 沢田氏が相場のおよそ10倍の金額を請求したのは異例だという声もありますが、今回の事件が社会的に大きく報じられたことを踏まえた金額と言えるかもしれません。
さいたま地裁平成16年9月24日判決 男性上司から、残業や休日出勤を強制され、「死ねよ」「殺すぞ」などの暴言・メールを受ける、私用に強制的に駆り出されるなどのいじめ被害にあった男性准看護師が自殺した事案。被害者遺族が損害賠償を求め、上司と病院を相手取り提訴しました。さいたま地方裁判所は、上司に対し1000万円、病院に対し500万円の損害賠償責任を負うよう命じました。 |